- コラム
BCP(事業継続計画)構築と検証の必要性 -5
ペリージョンソン ホールディング 株式会社
取締役 営業統括本部長 新谷雅年(あらや まさとし)
2021年4月
事業影響度分析
次に、事業が中断した場合のネガティブインパクトを検討していきましょう。以下に、想定される影響を列挙してみます。
利益・売上・マーケットシェア・資金繰り・顧客の事業継続・顧客との取引維持・従業員の雇用・福祉・法令・条例や契約違反・SLA(サービスアグリーメント)違反・社会的信用・社会的機能・地域的 機能等、その他さまざまなマイナス影響を想定することができるでしょう。
これらの影響をコントロールするためには事象を特定し、その事象が発生した際想定されるマイナスの影響を最小限に留め、目標復旧時間(Recovery Time Objective : RTO)と目標普及レベル(Recovery Level Objective : RLO)を定め、それを達成するための手法を確立し、BCPが発動された後、すべての部門や人々が役割を果たし、いち早く操業を回復させるための訓練を行わなければなりません。
しかし、すべてのリスクに対し完全な影響度分析を行い、それらを対象に訓練を行うことは、並大抵のことではないと考えます。また、ここまでお読みになった方はそのハードルの高さに気が滅入っているのではないでしょうか。もちろん必要な対策は取らなければなりませんが、できることをできる範囲で精いっぱいやることが重要であると考えます。
まずは、一般的に知られている高いリスクに対応することが肝要です。それは、1地震対策(火災、家屋倒壊、津波、停電等)、2風水害対策(河川氾濫による洪水・家屋の浸水・土砂崩れ・停電等)、3感染症対策(人員不足、安全配慮義務違反対策、事業上の閉鎖等)、4コンプライアンス違反(捜査対象・経営層不在・風評被害・不買運動等)です。
ここに挙げた4つのリスクは、近年誰もが認識しているものと言ってもよいでしょう。つまりは、想定内リスクです。想定内リスクに対応していない場合、そのリスクが顕在化して社会に大きなマイナス影響を与えたときには、社会的制裁は計り知れないものになり、最悪、倒産の道を歩む結果となることもあり得ます。
なかなかBCPの構築が進まない理由の1つは、難しく考えすぎるから…ということはないのでしょうか。もっと楽に考えていただき、「大事なことから」「できることを」「できる範囲で」最初の一歩を踏み出してください。