第5回:株式会社 竹中庭園緑化 エコロジーガーデン事業部(東京都江戸川区)
ISO9001:2008認証取得/観葉植物鉢を用いたインテリアデザイン、配置及びサービス
グリーンファーム 花広場 株式会社竹中庭園緑化
グリーンファーム 花広場 株式会社竹中庭園緑化

【企業理念】
私達は、お客様に植物を提供し、人々の心に「やすらぎ」、「潤い」、「憩」を与え、より良い環境を創造し、植物の提供を通して知的生産の向上を促し、社会に貢献しています。

私達は「お客様第一」の精神に基き「緑化の総合サービス事業」を目的としています。


聞き手:PJR

エコロジーガーデンで「癒しの空間」を
東京都江戸川区にある、株式会社 竹中庭園緑化では「エコロジーガーデン」という環境サービスを提供している。

エコロジーガーデンとは、「空気浄化能力の優れた植物(エコプラント)」と「消臭力に優れた土壌(エコド)」を組み合わせた、植物の設置からメンテナンスまでを行なう植物のリースサービスである。

同社のエコロジーガーデン事業部では、2003年にISO9001を認証取得、2009年には、本店が、ペリージョンソンレジストラークリーンディベロップメントメカニズム株式会社(PJRCDM)の採用する「温室効果ガス削減プロジェクト実施基準」に適合しているとの判定を受けた。

代表取締役社長の竹中 幸三郎 氏にお話を伺った。
-- エコロジーガーデンで「癒しの空間」を
PJR:弊社で認証を取得されてから、早7年となります。また、関連会社であるPJRCDM社で、CO2の排出量検証もさせていただいて、本当にありがとうございます。

竹中:こちらこそご支援いただきまして。

PJR:以前、慈恵医科大学附属病院と順天堂大学病院を訪ねる機会があったのですが、こちらの病院にも、お花や観葉植物のリースをされていらっしゃるようですね。

竹中:おかげさまで、多くの病院とお取引させていただいています。都内だけでなく、九州から仙台までの地方でもご提供させていただいております。

PJR:本当に綺麗ですよね。特に、順天堂さんの方は、以前と比べて、建物も新しくなりましたけど、室内のグリーンがすごく綺麗にされていました。

竹中:患者さんから見ると、非常にいい環境のようですね。

PJR:病院じゃないみたいですものね、本当に。

竹中:私自身が、そういった、何か社会貢献的なことサービスを提供できないかということで、当社の「エコロジーガーデン」というのですが、これを日本全国に広めていこうと考えているんです。

順天堂大学病院ロビー
順天堂大学病院ロビー
PJR:本当にホテルとか美術館みたいな、すばらしい空間になっていて驚きました。特に診療が終わった後は、病院では待たされますしね。普通は一刻も早く帰ろうって思うのに、順天堂さんなんかですと、そこで一杯お茶をいただこうかな、なんて。

竹中:そういう声がけっこう多いですね、患者様のほうは。基本的には、病院に喜んでもらうのではなくて、患者さんに喜んでいただける、癒しの空間を提供する。そういう狙いです。

PJR:それに「家族」ですよね。入院している家族に付き添ったり、お見舞いに来る家族の気持ちとしては、少しでも明るく、普通の場所と変わらない空間があるだけで、心が休まります。

竹中:そうですね。おかげさまで、本当にご好評いただいています。
-- マネジメントシステムの運用を通じて、組織を変革
「ISO9001の2000年版でサービス業も取り扱うというので、ようやく私たちの出番が来たと考えたんです」
「ISO9001の2000年版でサービス業も取り扱うというので、ようやく私たちの出番が来たと考えたんです」
PJR:そもそもISOをお取りになろうと思われた動機、目的というのはどういったものだったんでしょう?

竹中:だいぶ以前から取得したいと考えていたんですが、ISO9001が2000年版に改訂され、サービス業も取り扱うというので、ようやく私たちの出番が来たと考えたわけです。それがまず1つですね。

当社では、単にサービスとしてのグリーン(植物)を貸す、という考えではなく、今までになかった業態を作りあげていこうと考えていました。

それが、先ほどの「エコロジーガーデン」という、「空気浄化」をテーマとしたサービスで、そのサービスを本格的に提供していこうというのが、その時期だったんですね。2000年から準備を始めて、2001年に本格的に提供を開始しました。

そのような中、大体1年くらいですかね、ISO認証取得の検討をしました。

2000年版からサービス業も入るようになり、私たちとしては「環境サービス」の品質というものにしたいと考えました。そして、「エコロジーガーデン」という新サービスを提供するちょうどいい契機になった。この2つが大きなきっかけでした。

PJR:ISOを導入、認証取得する際には動機がおありだったかと思いますが、運用されて7年近くの間に、どのような成果がありましたか?

竹中:一番の成果は、継続的改善ですね。当社は、新しいことをするのが好きで、新たなことを見つけると、どんどん取り組んでいくんです。

その中で、当然、マネジメントシステムの方に反映されていきます。そこでその検証を、審査を通じてしていただくという形です。そして、審査対象外の部分についても、組織運営という点から、応用する形で、この7年間で組織の形態をずいぶん変えてきました。7年間で、5回くらいは組織構造が変わっています。

PJR:まあ、そうですか。多いですね(笑)。

竹中:ええ(笑)。

PJR:じゃあ、その考え方にのっとって、まずマネジメントシステムの運用という目的で、組織を柔軟に変えていくわけですね。

竹中:はい。それから、コミットメントの利用ですね。利用の仕方はいろいろありますが、「自分に義務を課す」ということです。後戻りできないようにする(笑)。

PJR:「有言実行」と(笑)。

竹中:そうです。役員をはじめ、社員全体で。強制するわけではありませんが、「同じように進んでくれ」、と陣頭指揮をとる。

PJR:そうですか。一般には、今ある組織体制で、マネジメントシステムをどう運用しようかという形のほうが、圧倒的に多いと思いますが、ソフトであるマネジメントシステムの情報の流れというか、業務の流れを見て、それに合わせていこうというのは、実は結構珍しいんじゃないかと思います。

「言うは易く行うは難し」で、構想する人はいると思いますけれども、実行に移すっていうのは、結構な力仕事になる部分もあると思います。経営サイドや管理職のトップが考えるほど、組織全体は柔軟に動けないというのが現実じゃないでしょうか。
-- 社長が率先することで、社内意識を高める
PJR:社員のみなさまの協力体制や参加意識は、どのように盛り上げる工夫をしていますか?

竹中:これはどちらかというと、日本的な手法で、朝、役員を含め、全社員が集まって、理念研修ということで社訓を唱和します。これは会社ができてから、一度たりとも欠かしたことはありません。

これで一番大切なのは、社長が欠席しない。社長が社員の先頭に立つということですね。現在は、常務が全体をコーディネートして進めるような形になっていますけれども。これが一番の形成方法ですね。

それと、7年のうちに5回近く組織変更をやっているのでいろんな試みがあります。各グループ制度を作っていて、その中で自分たちの目標を定めさせながら、いろんな改善についてチャレンジしています。

PJR:私も、こうしたら業務がうまくいくとか、こういう理屈、この串で指したほうが業務が効率的で、コミュニケーションがアップして、品質が上がると思うとすぐ変えたくなってしまって。

竹中:それから、今は「改革会議」といって、役職にかかわらず、これはと思う社員をピックアップし、定期的に集まって、改善方法や改革方法について議論して進めています。

「私自身、ISO9001を学んだことは、組織を運営する立場になったときにすごく役立っています」
「私自身、ISO9001を学んだことは、組織を運営する立場になったときにすごく役立っています」
PJR:そうですか。社内の方がきちんと、「何を言っているのか」ということの原理原則、基礎を理解するというのは、すごく重要なことだと思います。

規格で言われていることを、四角四面に解釈する必要は全然なくて、サービスの品質を管理しようとするときに、すでにやっていることがあるわけです。その中で、「規格でこういわれていることは、私たちはこうやっているよね」と、漏れていることとがないかを見ればいいだけのことで、実務以外にすることは、それほどないはずなんです。

ISO9001というのはよくできた規格で、情報の入手と、それをプロセスしてアウトプットしてどこに入れていくかということが、非常に明確です。ビジネスをしていると、どうしても、どこかでこう、糸が切れやすいですよね。それを定期的に確認していくことが、規格でいうところの「ベストプラクティス」だなと思います。
-- 環境サービスをCDMに展開
竹中:最初の頃はマスコミなどの報道をみると、「ISOを取らなかったら事業ができなくなる」くらいに感じましたね。じゃあ、取るならどこよりも、いの一番に取ろうじゃないかと。

PJR:今では多くの企業が取得されていますが、当時はそんな雰囲気でしたね。ISOを取られたときは、社員のみなさまもお喜びでしたか?

竹中:みんなで、「やったー!」「良かったー!」って握手したときの気持ちは、今でも覚えていますね。まあ、僕が一番大きな声を出しましたけれども(笑)。

PJR:まあ、そうですか。御社の社員のみなさまは、すごく素直な性格の方が多くていらっしゃるのかな(笑)。なんだか、やっぱりお話を聞くと、社風的に、みなさん明るくて、楽しそうですよね。

今後はISO9001を使って、こんな成果を出したいといった、展望などはおありですか?

竹中:排出権、CO2削減量の方に繋がってくるんですけれど、「エコロジーガーデン」は、植物を使った環境サービスなので、環境ということで他に何かできないだろうかと考えました。そこで出てきたのがCDMだったんです。

PJR:森林吸収ですね。

竹中:ええ。ようやく去年、日本もキックオフし、法令化が進みましたが、その前から、当社では「ビルに植林」という商標を取っているんですが、ビル自体を一つの禿山とみなして、そこにうちの貸植木で、植林できないか調査を進めていたんです。

ただ、鉢ひとつあたり、どれくらいの吸収量になるのかなど、大学の研究機関などと共同しないと、なかなか正確な数字を出せないので、国連CDM(クリーン開発メカニズム)では難しいことがわかりました。

そこで、エネルギー方式で、農場、ハウスの重油か、車の運行回数を減らす方法しかないなという結論になり、車の方がいいだろうという結論になりました。

もうひとつは、植物診断システムというのを開発しました。これによって、廃棄のための車の運行回数を減らす工夫をしました。

これは、トマトや野菜などで使っている手法を応用したものです。トマトは南米産ですから、当社で扱っている観葉植物とは、まあ、従兄弟関係ということで。

例えば、反射式光度計というのを使いながら、硝酸イオンの濃度を測定する方式を考えました。硝酸イオンの濃度は季節ごとに変化するのですが、季節ごとの基準値で見て、植物の外観診断をした上で、弱っていそうだと思われるものをピックアップして、それを破砕し、汁を摂るんですね。それを光度計にかけることによって、硝酸イオンの濃度を測定し、先ほどの濃度の範囲に入っていれば、だいたい大丈夫と。

そうすることで、従来行なっていた外観からの判断に、プラスアルファとして、測定が加わり、サイクルの回数を減らす。回数を減らすことによって、車の運行便が減りますから、CO2の削減が可能になってくる。去年の検証では、「理論的にはいいでしょう」となりました。今年はその検証を受ける予定です。

ISO9001に道案内していただきながら、当社が考えている環境のサービスというのを導いてくれる効果があって、そのための新たな商品サービスを今準備しています。

PJR:わかりました。

竹中:おかげで、昨年にグループ会社を設立しました。

PJR:そうですか。それは存じあげませんでした。
確かに森林吸収は、今話題のカーボン・オフセットなんかでも、取り上げられているメソッドの内の一つで、このカーボン・オフセットも認定の仕組みの下で、検証をしようという話が少しずつ出ています。

JAB(財団法人 日本適合性認定協会)の方で、認定事業を排出量の検証をする第三者機関の要求事項であるISO14065という規格に対して、開始しまして、PJRCDM社も、パイロットの試行的な研究には参加をさせていただいたのですが、今年の夏から正式運用になるそうです。
-- ISOを活用して新たなサービスを生み出す
竹中:話はちょっと前後いたしますけれども、「エコロジーガーデン」では、ウォルヴァートン博士という方の存在が欠かせなかったんです。

博士の講演を聞いてすぐ、アメリカまで追いかけていきまして、うちの最高顧問という形で契約させてもらえるまで追いかけました。アメリカでお会いして、その日のうちに、「私どもの最高顧問になってください」と。

PJR:直談判で。すごい(笑)。

竹中:はい。今年は、インドの出版社から、ウォルヴァートン博士との共著がインドで出版されました。『Plants: Why You Can't Live Without Them』という本の中で、私の実践を紹介していただきました。うちは、今までのグリーンレンタルやリースという概念ではなく、「環境サービス業」という業態を作って、その中で、植物というツールを、どう使っていくかと。
その中で、合理的な管理方式、ISOのシステム的な考え方が、非常に裏付けとなってくれました。

PJR:最近、ISOをうまく活用できないという悩みをよく聞くことがありますが、御社は、自社向けにうまく活用されているようですね。

竹中:ISOを取得すれば、何か仕事が増えるとか、そういうイメージではなくて、受け身ではなく、これを使うことによって、次の新たなサービスをどう生み出していくかと言うのが大事なんです。ボーイスカウトのバッジを着けていれば、すべてが品行方正というわけではなくてですね。

PJR:例えが面白いですよね(笑)。本当にそうですよね。

私が学んだときも言われたんですけれども、「よく仕事ができる人なら誰でも普通やっているようなことが、書いてあるんだよね。だけど、できないんだ」と。実際にやれるかというと、できないから、人間というのは、やはり弱いですし、いろんな規則を作っても、なかなかそのとおりに継続できないですね。だからこそ、こういう規格で、ひとつひとつ自分たちの活動を定期的に見直す、という必要があるんだよ、というような。それ以上でも以下でもないと、よく言われましたもので。

実は私どものような審査機関、第三者検証機関が要求されている規格・基準も、ISO9001をかなりベースにしているんですね。

私たちには、ISO17021という規格がありまして、これを満たさないと認証機関として、認定をもらえないんです。その17021の中に、ISO 9001の適合宣言をするか、ISO17021でいくか、ということを決めよ、なんていう項目があるくらいです。

ISO9001というのは、私たちのような第三者として何かを検証しようとする組織にとっても、非常に重要なんです。ISO17021にある独特の要求である公平性や透明性っていうのも、製品への要求として理解し、設計のインプットとして解釈してしまえば、ISO 9001に全部乗りますし。そういった意味で、上手に、戦略的にお使いだなと思います。

竹中:褒められました(笑)。これ、水戸黄門の印籠をいただいたような(笑)。

もうひとつ、実は本日、常務を同席させようと考えていました。というのも、今後のISOの運用については、常務への移管を進めています。現在総務部門全体を統括している常務が私の後継者として、後は陣頭指揮をとることになります。

PJR:私自身、ISO9001を学んだことは、組織を運営する立場になったときにすごく役立っています。自分が行っている活動のなかで抜け落ちている、弱い、行き届いていないところはこのプロセスだ、とか、でもこれ重要だ、とか、参照して活動を見直すことができます。例えば、顧客の意見を吸い取るところのプロセスが弱いだとか、すごくいい教科書になっています。ひょっとしたら常務も、そんな風に感じていらっしゃるかもしれませんね。

竹中:やはりお客様に対しては、事業の永続性というものをアピールしていく義務がありますので、後継者をしっかり育てて、お客様に安心を与えていきたいと思っています。

PJR:常務にもお目にかかりたかったですね。女性として経営に携わるもの同士、特有の共通する悩みもあるかと思いますし、次の機会には、ぜひお会いできればと思います。
本日はどうもありがとうございました。
【取材を終えて】
取材を終えて
取材先のビルのエントランスまでお迎え来てくださった竹中社長。帰りは、私たちが地下鉄の入り口に消えるまで手を振ってくださいました。花や緑を使って、人に優しい環境を提供しようという新しいビジネスモデルを作られた社長のもてなしの心をこんな場面でもうかがうことができました。


次々と精力的にそしてクリエイティブに新しいことを始められる社長。ISOもともかく業界で先に取得を目指したとのこと。後継社長にも、ISOで醸成した経営システム文化をしっかり引き継がれているようです。