第2回:ニッカウヰスキー株式会社 仙台工場(宮城県仙台市)
ISO9001:2000/ISO14001:2004認証取得/酒類製造業

左から興梠氏、三明氏、尾形氏、中川氏、吉田氏
【参加者】 | |
---|---|
ニッカウヰスキー 株式会社 仙台工場 | |
工場長 | 中川 圭一 氏 |
品質管理部 部長 | 尾形 久 氏 |
品質管理部 担当次長 | 興梠 守仁 氏 |
製造部 部長 | 三明 稔 氏 |
製造部 主任 | 吉田 大輔 氏 |
聞き手:PJR

今年40周年を迎えるニッカウヰスキー株式会社 仙台工場では、1999年にISO9001、2001年にはISO14001の認証を取得している。そんな品質と環境に対して高い意識をもっている同社ではあるが、近年ISOの運用に対してマンネリ化を感じていたという。
ISOを見直すため、プロセスアプローチ審査に興味を抱いた同社 仙台工場では、2008年10月にISO9001、同年11月にはISO14001の認証登録を弊社ペリージョンソンレジストラー株式会社へと移転した。
仙台工場の中川工場長をはじめ、品質管理部、製造管理部のみなさまに、同社がどのようなマネジメントシステムの構築を目指しているのかについてお話をうかがった。
ISOを見直すため、プロセスアプローチ審査に興味を抱いた同社 仙台工場では、2008年10月にISO9001、同年11月にはISO14001の認証登録を弊社ペリージョンソンレジストラー株式会社へと移転した。
仙台工場の中川工場長をはじめ、品質管理部、製造管理部のみなさまに、同社がどのようなマネジメントシステムの構築を目指しているのかについてお話をうかがった。
-- ISO導入のきっかけ
PJR:ISOはいつ、どのような目的で導入したのでしょうか?
中川:QMS(ISO9001)は、1999年に仙台工場が初めて取得しました。
三明:ちょうどISOブームが起きつつある時期で、この機会に工場を変えたいという思いがありました。文書化、QC工程表の作成、マニュアル化などは、全社的にある程度行なっていましたが、整理された仕組みにはなっていませんでした。
中川:当時はウイスキーも食品だと強く意識するようになったばかりの頃でした。品質保証の体制をしっかり確立していこうとしていた時期でもあり、製造部の中にあった現在の品質管理部を独立させたのもその頃でした。機能を分けることで「品質」という意識を強く出していった時期で、ISOもそのひとつの手段だったわけです。
PJR:この10年間を振り返って大変だったところは?
三明:仙台は最初にISOに取り組んだので文書化が大変でした。手本もなく、推進していた人が事務局を作り、自ら勉強しつつ勉強会を開いていました。みんなどういうことをしようとしているのかピンときておらず、文書化というのもよくわかっていませんでした。
尾形:最初の審査は緊張しました。直前まで手直しをして、審査を受けている間も対応に追われていました。事務局には専任が2名いましたが、当時はグレンウイスキー設備の移設も行なっていて、それだけでも大変でした。
中川:QMS(ISO9001)は、1999年に仙台工場が初めて取得しました。
三明:ちょうどISOブームが起きつつある時期で、この機会に工場を変えたいという思いがありました。文書化、QC工程表の作成、マニュアル化などは、全社的にある程度行なっていましたが、整理された仕組みにはなっていませんでした。

PJR:この10年間を振り返って大変だったところは?
三明:仙台は最初にISOに取り組んだので文書化が大変でした。手本もなく、推進していた人が事務局を作り、自ら勉強しつつ勉強会を開いていました。みんなどういうことをしようとしているのかピンときておらず、文書化というのもよくわかっていませんでした。
尾形:最初の審査は緊張しました。直前まで手直しをして、審査を受けている間も対応に追われていました。事務局には専任が2名いましたが、当時はグレンウイスキー設備の移設も行なっていて、それだけでも大変でした。
-- 自社の活動と一体となったISO9001
PJR:事務局2人で、通常の業務に加え、準備をするのは大変だったと思います。実際に10年間運用した中で、どのような成果を実感していますか?
中川:今の品質保証の仕組みは、3、4年前から始めた「品質レベル向上活動」とそのベースのISO9001でできあがっています。
工場には「品質レベル」というものがあります。例えば、「レベル3」はおかしなことがあれば必ず止まり、異常品が次工程に流れていかない。「レベル4」は先取り管理、つまり異常が起きそうなところには、あらかじめ手が打たれているというものです。この「品質レベル」で、自分たちの今の実力、強み弱みを把握し、さらに上のレベルを目指します。
この活動で、最初は文書類、記録をしっかり作ることから始めました。「正常」の範囲が示されているので、誰にでも「異常」がわかる。そして、記録の中で異常は必ず明示され、どのように対処されたかも記録されている。すべてISO9001がベースでした。
PJR:記録をしっかりとることは非常に大切です。その記録がインプットとなって改善につながるということは、ISO9001がうまく定着しているといえますね。品質レベルという目安があって、管理され、上のレベルを目指す目標がある。それを達成するためにISO9001を使うということは実業に即した本当にいい仕組みだと思います。
中川:今の品質保証の仕組みは、3、4年前から始めた「品質レベル向上活動」とそのベースのISO9001でできあがっています。
工場には「品質レベル」というものがあります。例えば、「レベル3」はおかしなことがあれば必ず止まり、異常品が次工程に流れていかない。「レベル4」は先取り管理、つまり異常が起きそうなところには、あらかじめ手が打たれているというものです。この「品質レベル」で、自分たちの今の実力、強み弱みを把握し、さらに上のレベルを目指します。
この活動で、最初は文書類、記録をしっかり作ることから始めました。「正常」の範囲が示されているので、誰にでも「異常」がわかる。そして、記録の中で異常は必ず明示され、どのように対処されたかも記録されている。すべてISO9001がベースでした。
PJR:記録をしっかりとることは非常に大切です。その記録がインプットとなって改善につながるということは、ISO9001がうまく定着しているといえますね。品質レベルという目安があって、管理され、上のレベルを目指す目標がある。それを達成するためにISO9001を使うということは実業に即した本当にいい仕組みだと思います。
-- プロセスを追いかける審査
PJR:弊社の審査を受けてどのような感想を持たれましたか?
興梠:スピーディだったとみんな言っていました(笑)。持ち時間の中で必要な審査が終われば、90分の予定のところを60分に切り上げて過不足なくやり、中身も合否判定、○×や、あるなしのチェックだけでなく、QC工程表や準備したことがなされていたかなど、自分で見過ごしてしまうようなところを洩れなく見てもらえ、今までにない審査だったと思います。
PJR:私たちは、企業の目標達成のツールとしてISOが有効活用されることに注目します。本業での目標達成にISO9001の活動が寄与しているか、プロセスをしっかり追いかけて欲しいと審査員には強調しています。
吉田:確かにプロセスが前面にでているというのを実感しました。今までは、ISOのために文書を整理整頓して、記録をとってというのがありましたが、それと比較するとそういったものがほとんどない。全然見ていないわけではなく、見られてはいるのですが、プロセスの中でいろんな工程を見られたという印象です。その点が非常によかったと思います。
PJR:記録がしっかりなされ、手順どおりに要求事項を満たして活動していても、成果が上がっていないケースはプロセスをしっかりと追いかけます。成果が出ていないのはどこか弱点があるのではないかと、審査計画にはなくても時間をかけるようにしています。表面上は仕組みが良いように見えるけれども、実業からすると必ずしも改善につながっていないケースというのが中にはあるからです。
興梠:スピーディだったとみんな言っていました(笑)。持ち時間の中で必要な審査が終われば、90分の予定のところを60分に切り上げて過不足なくやり、中身も合否判定、○×や、あるなしのチェックだけでなく、QC工程表や準備したことがなされていたかなど、自分で見過ごしてしまうようなところを洩れなく見てもらえ、今までにない審査だったと思います。
PJR:私たちは、企業の目標達成のツールとしてISOが有効活用されることに注目します。本業での目標達成にISO9001の活動が寄与しているか、プロセスをしっかり追いかけて欲しいと審査員には強調しています。
吉田:確かにプロセスが前面にでているというのを実感しました。今までは、ISOのために文書を整理整頓して、記録をとってというのがありましたが、それと比較するとそういったものがほとんどない。全然見ていないわけではなく、見られてはいるのですが、プロセスの中でいろんな工程を見られたという印象です。その点が非常によかったと思います。
PJR:記録がしっかりなされ、手順どおりに要求事項を満たして活動していても、成果が上がっていないケースはプロセスをしっかりと追いかけます。成果が出ていないのはどこか弱点があるのではないかと、審査計画にはなくても時間をかけるようにしています。表面上は仕組みが良いように見えるけれども、実業からすると必ずしも改善につながっていないケースというのが中にはあるからです。
-- ISO9001とISO14001の統合に向けて
中川:ISO9001は、品質レベル向上運動を行なっているのでISOと意識しなくても日常的にできていますが、ISO14001は「環境」と意識しないと進まないのが現状です。日常的な取り組みの中に溶け込むというにはほど遠く、全体としてはやっただけの成果があったとはまだまだ言えません。
PJR:ぜひISO9001と統合して審査を受けていただきたいですね。認証のために環境マネジメントシステムを追加的に行うのは、実業に寄与する実感を社員も持てないと思います。モチベーションも含めいろいろな意味で必ずしもプラスに働かないのではないでしょうか。
吉田:基本的には統合したいと思っています。認証機関をPJRに変えたのは、マンネリ化を脱却したいと思ったことと、プロセス審査について興味があったからです。セミナーに参加してやってみようということになりました。
PJR:環境マネジメントシステムの審査にも、新しい発見や、今までの審査と手法、視点、質問の仕方が違うといったことなどはありましたか?
吉田:一番印象的だったのは、ロールプレイをやったことです。緊急事態の手順だとか実際現場にいる人に手順書を元にやってみてくださいというものでした。 ニッカの本社からの監査ではそういうことはありますが、それに類似していて、そういう面では自社監査に近い形だし、今までと違ってよかったです。
PJR:会議室ではあまり時間を使わず、実際作業している人に通常の作業をしていただいて、その中からプロセスを見るよう指導しています。実務をしている人がわかっていれば、作業は適切行われているという判断です。これは手順書に書いてある以上に大切なことです。

吉田:基本的には統合したいと思っています。認証機関をPJRに変えたのは、マンネリ化を脱却したいと思ったことと、プロセス審査について興味があったからです。セミナーに参加してやってみようということになりました。
PJR:環境マネジメントシステムの審査にも、新しい発見や、今までの審査と手法、視点、質問の仕方が違うといったことなどはありましたか?
吉田:一番印象的だったのは、ロールプレイをやったことです。緊急事態の手順だとか実際現場にいる人に手順書を元にやってみてくださいというものでした。 ニッカの本社からの監査ではそういうことはありますが、それに類似していて、そういう面では自社監査に近い形だし、今までと違ってよかったです。
PJR:会議室ではあまり時間を使わず、実際作業している人に通常の作業をしていただいて、その中からプロセスを見るよう指導しています。実務をしている人がわかっていれば、作業は適切行われているという判断です。これは手順書に書いてある以上に大切なことです。
-- 「決められたことを決められた通りに行なう」ことの大切さ
PJR:今回の審査では、現場の人を含め社内アンケートをとられたそうですが、どのようなご意見がありましたか?
興梠:実際の作業を、「QC工程表」や「手順書」を見ながら、その通り正しくやっているかを聞いてもらったのが初めてで嬉しかったそうです。普段はそういうことはなく自分で判断していましたので、確認を照らし合わせながらやったのがよかったです。決められたことに対し決められた通りにやる難しさというのがありますから。
PJR:きちんとできているというのはすごく評価に値することです。実際、仕組みで間違えているケースは必ずしも多くなく、手順書だけを読んでも審査では何も見つかりません。しかし、実行の時に失敗が起こる。こうやったほうがいいと思ったことが形になっていないというのが圧倒的に多いんです。
PJR:アンケートの悪かった点は?
興梠:特にありませんが、今回は1回目の審査だったので、2回目以降どれだけ厳しい指摘があるか…。
PJR:インタビューでは人を審査しているわけではありませんから、ご安心ください(笑)。
インタビューは、仮に作業が定着していなければ、それはどこからきているのかという次のステップの入り口なだけです。今後も社員の方に、積極的にインタビューをさせていただくと思いますが、どういう理由で、どういう計画の中で、審査員が聞いているのかを理解していただければと思います。
中川:まだPJRの審査は1回目を受けたところなので、これからいろいろと指摘をいただけるのではないかと思っています。
PJR:今後は審査員が継続的に見ていく中で、お客様の組織の活動に対する理解度があがってくるので、見るポイントもしぼりやすくなってきます。次回は今回にも増していい審査ができると思いますし、ここには時間をかけなくても大丈夫とより効率的になると思います。
本日はお忙しい中、ありがとうございました。
興梠:実際の作業を、「QC工程表」や「手順書」を見ながら、その通り正しくやっているかを聞いてもらったのが初めてで嬉しかったそうです。普段はそういうことはなく自分で判断していましたので、確認を照らし合わせながらやったのがよかったです。決められたことに対し決められた通りにやる難しさというのがありますから。
PJR:きちんとできているというのはすごく評価に値することです。実際、仕組みで間違えているケースは必ずしも多くなく、手順書だけを読んでも審査では何も見つかりません。しかし、実行の時に失敗が起こる。こうやったほうがいいと思ったことが形になっていないというのが圧倒的に多いんです。
PJR:アンケートの悪かった点は?
興梠:特にありませんが、今回は1回目の審査だったので、2回目以降どれだけ厳しい指摘があるか…。
PJR:インタビューでは人を審査しているわけではありませんから、ご安心ください(笑)。
インタビューは、仮に作業が定着していなければ、それはどこからきているのかという次のステップの入り口なだけです。今後も社員の方に、積極的にインタビューをさせていただくと思いますが、どういう理由で、どういう計画の中で、審査員が聞いているのかを理解していただければと思います。
中川:まだPJRの審査は1回目を受けたところなので、これからいろいろと指摘をいただけるのではないかと思っています。
PJR:今後は審査員が継続的に見ていく中で、お客様の組織の活動に対する理解度があがってくるので、見るポイントもしぼりやすくなってきます。次回は今回にも増していい審査ができると思いますし、ここには時間をかけなくても大丈夫とより効率的になると思います。
本日はお忙しい中、ありがとうございました。
【取材を終えて】
杜の都、仙台から作並温泉方面に向かって車を走らせること30分。美しい木立のなかにたたずむレンガ造りの低層の建物群。
スコットランドを思わせるすばらしい自然の中に、近代的な設備を有し、品質にかけるマイスターの世界。
ISO9001とISO14001というマネジメントシステムを、そのマイスターの世界に導入し、製品を通じて豊かな時間を提供するため、ひたむきに取り組まれているみなさまの姿が印象的でした。
そうしたみなさまの一層の期待に応える品質の審査を提供できるようにしたいと、思いを新たにしたひと時でした。
ニッカウヰスキー株式会社 仙台工場
