- コラム
日本企業をも巻き込んだ国際的な電気・電子機器の「責任あるリサイクル」
2018年に入ってから、日本国内でR2(Responsible Recycling:責任あるリサイクル)認証の引き合いが急増しています。
この場でR2認証の動向と社会的な背景について確認してみたいと思います。
*R2認証の詳細は、関連ページをご参照ください。
- R2(Responsible Recycling:責任あるリサイクル)の認証取得審査
- R2(Responsible Recycling:責任あるリサイクル)の対象範囲
- R2(Responsible Recycling:責任あるリサイクル)のメリットと構築ステップ
- R2(Responsible Recycling:責任あるリサイクル)とそのほかのリサイクル関連認証
- 特別ウェビナー「R2 (責任あるリサイクル)入門セミナー」動画配信
R2認証の動向と社会的な背景
さて、どうして2018年に入ってR2への関心が高まっているのでしょうか?
R2への関心が増している大きな要因の1つは、増え続ける使用済み電気・電子機器の排出量の問題でしょう。国連大学の予測では、2014年の世界の電気・電子機器廃棄物の発生量は約4,180万トン、2018年には5,000万トンにも増大するとされています。
それを裏付けるように、R2の認証組織は着実に増加しています。
2017年1月:634施設
2018年8月現在:824施設
(SERI*のWebサイトより)
*SERI: R2認証は、SERI(Sustainable Electronics Recycling International)によって維持・管理されています。
近年、問題になっているのは、増加し続ける使用済みの電気・電子機器の処分方法です。無料引き取り業者に渡した後の処理も大きな問題になっています。
2014年の世界の電気・電子機器廃棄物、約4,180万トンのうち60~90%が違法に取引もしくは投棄され、その多くが犯罪組織や資金洗浄と結びついている可能性もあると言われています。また、技術の進歩によって新たな種類の電気・電子機器のゴミが発生することも考えられます。
こうした状況を受け、米国ではEPA(米国環境保護庁)がR2の取得を推奨するなど、使用済みの電気・電子機器を適正に取り扱い、労働者の安全衛生を確保し、環境への影響を考慮する適正なリサイクル事業者を認証する動きが活発化しているのです。
現在、米国企業を中心に、PCや携帯電話などの中古製品や使用済み電気・電子機器を引き取るリサイクル事業者に対して、R2の認証取得を取引条件とする動きが始まっています。特にカナダでは、政府の方針として、電気・電子機器廃棄物の処理業者に対しR2取得を義務付けています。つまり、カナダの電気・電子ゴミを扱う業者と取引する場合は、日本企業でもR2認証の取得が義務になっているということです。
もう1つ、R2認証を推し進めている背景には「社会的責任」の盛り上がりがあるでしょう。
広義では、「社会的責任」は以下のように意味を持ちます。
社会的責任(Social Responsibility)とは
- 組織活動が社会および環境に及ぼす影響に対して、組織が担う責任のこと
- さまざまな組織が持続可能な社会への貢献に責任をもつ
- 企業(CSR*)だけではなく、すべての組織(Social Responsibility)が対象
*CSR=Corporate Social Responsibility
社会的責任を果たすメリット
社会的責任を果たす最大のメリットは、「社会からの信頼を得る」ことだけではありません。
以下のような効果も期待できます。
- 社会の期待に反する行為(法令違反など)によって、事業継続が困難になることの回避
- 組織の評判、知名度、ブランドの向上
- 従業員の採用・定着、士気向上、健全な労使関係への効果
- 消費者とのトラブルの防止・削減やその他ステークホルダーとの関係向上
- 資金調達の円滑化、販路拡大、安定的な原材料調達
社会的責任を果たすための基本とすべき重要な視点
- 説明責任:組織の活動によって外部に与える影響を説明する
- 透明性:組織の意思決定や活動の透明性を保つ
- 倫理的な行動:公平性や誠実であることなど、倫理観に基づいて行動する
- ステークホルダーの利害の尊重:さまざまなステークホルダーへ配慮して対応する
- 法の支配の尊重:各国の法令を尊重し順守する
- 国際行動規範の尊重:法律だけでなく、国際的に通用している規範を尊重する
- 人権の尊重:重要かつ普遍的である人権を尊重する
こうした「社会的責任」をふまえ、ここで具体的にR2を取得するメリットを整理してみましょう。
ビジネス機会の拡大や安定化、市場競争力の向上
- メーカーからの取得要請に応える
- 他社との差別化につながる
- 業務の安定化につながる
- 販路拡大につながる
事業におけるリスクの低減
- 環境や労働安全衛生に関するリスクを低減
- 電気・電子機器リサイクル事業者の法的リスクを低減
- ISO9001、ISO14001、ISO45001など他の規格との統合マネジメントシステムを構築できるため、事業負荷が低減
地域住民・社会との良好な関係の維持、信頼性の向上
- 国内外の法令等順守を証明
- 安全で効果的な電気・電子機器や部品の回収および再利用を促進
- 第三者による認証の取得による社会的な信頼の向上
R2取得の要請元は、パソコン、携帯電話などを製造している電気・電子機器のメーカーです。
これらのメーカーは、サプライチェーンに対してR2認証を要請することで、上述の「社会的責任」を果たす一助として活用しています。
また、R2取得のメリットをみると、業務上のリスク低減だけなく、自社の「社会的責任」を果たす役割も担っていることが分かります。
これらのことから、使用済み電気・電子機器の増大に伴う処理の問題と「社会的責任」を背景としたR2認証が、これからも増えていくことが予想されます。
*R2認証の詳細は、関連ページをご参照ください。
- R2(Responsible Recycling:責任あるリサイクル)の認証取得審査
- R2(Responsible Recycling:責任あるリサイクル)の対象範囲
- R2(Responsible Recycling:責任あるリサイクル)のメリットと構築ステップ
- R2(Responsible Recycling:責任あるリサイクル)とそのほかのリサイクル関連認証
- 特別ウェビナー「R2 (責任あるリサイクル)入門セミナー」動画配信
2019年3月