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第9回:食品事故を予防する2つの確認点

食品工場でFSSC 22000の認証を取得しているかどうかに関わらず、食品事故は起こしてはならないものです。また、食品事故に直結する最たるものとして、CCPの許容限界を逸脱してしまった製品が流出してしまうことが挙げられるでしょう。
前回は、CCPのモニタリングについてお話をしました。CCPのモニタリングでは、確実に許容限界の逸脱を発見して、ただちに現状の復帰と逸脱した製品についての修正をしなければなりません。しかし「許容限界の逸脱を修正する」と口にすることは簡単ですが、現実は、コストや納期への影響などのさまざまな要素も考慮しなければならず、大きな負担となります。ならば、そもそも許容限界の逸脱が起きないようにすれば、修正に関する負担はなくなります。そこで今回は、許容限界の逸脱を起こさないための確認点についてお話ししましょう。

この確認点は、FSSC 22000の規格の中で、「検証」と呼ばれているものです。「検証」を行うことにより、みなさんの工場でまだ顕在化していないCCPの許容限界を逸脱してしまう要因が見つかることでしょう。それら要因への対策を行うことができれば、CCPの許容限界を逸脱する可能性は限りなく低くなります。

「検証」は、妥当性と有効性の2つに分類されます。

1 妥当性

現在工場で決められたルールや基準の条件は、どのように決めましたか? 妥当性とは、安全な食品をつくるためのルールや基準の根拠が正しいものであるということです。以前、許容限界を決める際は、科学的な知見やバックデータ、法的な根拠に基づいて決定するとお話ししました。せっかく決めたはず許容限界も、根拠のないものであったり、安全な食品をつくるために必要な厳しさのないものであったりしたら、いくらそれを守っていたとしても、いつ食品事故が発生してもおかしくありません。
前回の例として挙げた金属探知機で考えてみましょう。許容限界として必ず取り除く鉄やステンレスのサイズを決めて、テストピースを流して金属探知機の動作確認をすることによりモニタリングを行うことが一般的な方法でしょう。しかしそのテストピースのサイズ以下のステンレスは、取り除けない場合があります。妥当性の確認として、許容限界として設定したテストピースのサイズが、食品事故を防ぐことができるサイズであるということを証明する必要があります。

2 有効性

工場で決められたルールや基準を守ることで、期待通りの効果がでていますか?
有効性とは、妥当性のあるルールや基準に従って作業をしたときに、たしかに安全な製品がつくれているということです。せっかくルールや基準に従った作業をしていても、許容限界を逸脱してしまった製品ができてしまったら、その作業は意味がありません。
先述と同様に金属探知機を例に挙げましょう。金属探知機の役割は、製品の中に鉄やステンレスなどが混入していたら取り除くことです。では、役割通りに混入している鉄を取り除けているでしょうか。例えば実際に金属探知機で排斥された製品の中から鉄が見つかっていても、お客様からの鉄が混入していたというクレームがなかったとします。クレームがなかったという実績も有効性の判断材料のひとつですが、その他にも実際に金属探知機で取り除いた異物の鉄やステンレスの大きさや形とCCPの許容限界の大きさとの比較や、金属探知機の感度の弱い場所でもテストピースを反応するか、鉄が混入している製品が連続して流れてきても金属探知機がすべて排斥できるか等のいろいろな側面から調べることで有効性の確認ができます。有効性の確認では、金属探知機が十分に機能していて期待通りの役割を果たせているということを証明しなければなりません。

金属探知機というひとつのプロセスだけでなく、工程全体におけるプロセスで、あらゆる金属異物が混入しない管理体制を構築し、その体制が適切であること、つまり妥当性があることが、期待通りの効果という有効性をもたらします。

今回はCCPの許容限界の逸脱についてクローズアップしてお話しましたが、2つの確認点は、前提条件プログラムでも同じように考えられます。実際、多くの工場では、鉄やステンレス等の金属の混入による食品事故を防ぐために、今回CCPの事例としてお話した金属探知機だけでなく、前提条件プログラムによる多くの管理もなされています。たとえば切断機や混合機など、金属と金属が接触している機械や緩んで外れる可能性のある金属部品が使われている設備での組立てや欠損の確認などがそれに該当します。

現在、みなさんの工場ではクレームが発生していないかもしれません。しかし、顕在化していないだけかもしれません。前提条件プログラムもあわせて金属探知機と同様に妥当性と有効性を「検証」することで、食品事故を未然に防ぎましょう。多方面からの「検証」が食品工場での修正に関する負担を減らし、より食品事故が起きづらい仕組みづくりへとつながります。もちろんこれはFSSC 22000の認証取得に関わらず、日常的な工場内での管理の中でも有効な考え方です。ぜひ今日からこの妥当性と有効性という2つの確認点を頭に思い浮かべて工場に入ってみてください。


PJR 審査員 伊藤 毅(いとう たけし):静岡県出身、農学修士。

前職は食品メーカーに勤務し、食品製造、品質保証、技術開発部門を担当する。ISO 22000の認証取得に携わり、その後は食品安全チームリーダーとして、食品安全マネジメントシステムの実務も経験。PJRでは食品規格の審査、および審査プログラムを担当する。 ワインをこよなく愛し、ワインエキスパートの試験に向けてコルクを抜く日々。

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