【連載】FSSC 22000審査のポイント
第7回:運用を考えたCCPのモニタリングシステムとは



前回、CCPを決定する際は、短絡的に決めつけるのではなく、工程の特徴や工程のつながりを確認することが大切だとご説明しました。今回は決定したCCPのモニタリングシステムを構築するうえでのポイントについて考えてみましょう。

これからFSSC 22000に取り組む工場で、ゼロから食品安全の仕組みを構築するということはないはずです。なぜなら、新たに工場を新設するといった場合などを除いて、ほとんどの工場はこれまでも食品を製造しているため、FSSC 22000でいうところのCCPのモニタリングシステムに相当する仕組みがあるはずだからです。
つまり、新たにFSSC 22000を導入することで、これまで築いてきたモニタリングシステムの過不足を見直すこととなり、結果として工場の食品安全レベルの向上につながる可能性があるのです。

それでは、FSSC 22000の要求事項を確認してみましょう。FSSC 22000では、CCPのモニタリングについて、『ISO 22000』の「7.6.4 重要管理点のモニタリングのためのシステム」に書かれています。
モニタリングシステムは、次の項目を含む関連手順、指示及び記録で構成しなければなりません。

  • 適切な時間枠内に結果を提供する測定又は観察
  • 使用するモニタリング機器
  • 適用する校正方法
  • モニタリング頻度
  • モニタリング及びモニタリング結果の評価に関連した責任及び権限
  • 記録に関する要求事項及びその方法

食品安全チームは、7.6.4の要求事項に基づいて、CCPのモニタリングシステムを決定します。ただし注意が必要なのは、モニタリングシステムを決めるのは食品安全チームであっても、実際のモニタリングを行うのは現場の作業者だということです。

以前、訪問したソーセージ工場では、加熱殺菌工程をCCPとしていました。その工場のモニタリングシステムは、ソーセージを規定の温度で一定時間、蒸気釜で加熱し、加熱直後にソーセージの中心部を棒状のセンサーがついた温度計で測定するというものでした。作業者は、測定した温度をチェックシートに記録し、許容限界の範囲に入っているのかを確認します。また、温度計は定期的に標準温度計と比較、校正していました。

ところが食品安全チームが数か月分の記録を集計してみたところ、作業者によって記録された温度のばらつきに明らかな違いがあることに気づきました。その違いはCCPの許容限界を逸脱するほどのものではなかったため、製品には問題はありませんでした。しかし、食品安全チームは疑問に思い、実際のモニタリング現場を観察しました。
すると、ソーセージの温度測定の直前に、センサーをお湯で温めてから行う人と、温めずに行っている人がいたのです。

そこで各作業者に話を聞いたところ、FSSC 22000の取組みを開始する前から、ソーセージの中心温度のモニタリングは実施しており、あらかじめセンサーを温めていたとのことでした。今回、食品安全チームがモニタリングシステムを整理、決定した際に、センサーの初期温度に関する指示がなかったため、人によってはこれまでどおりにセンサーを温めていたのです。

これは食品安全チームではまったく想定されていないことでした。モニタリングシステムを食品安全チームの話し合いのみで決定してしまい、実際にモニタリングをしている担当者と十分な意見交換ができていませんでした。

食品安全チームがモニタリングシステムを構築しても、想定外の手順でモニタリングが行われてしまうと、その結果の正確性は担保できません。また、測定記録が許容限界内だったとしても、誤った手順で行われていた場合は、その製品が許容限界を逸脱していても気がつかず、大事故となる可能性もあります。

CCPのモニタリングシステムは、製品の安全を保証するもっとも重要なポイントです。CCPを運用するのは現場で作業する方であることを認識し、机上の話し合いだけでなく、実際の作業現場を確認することがモニタリングシステムを構築するうえで大切になります。

次回は、CCPの逸脱時の処置を中心に、トラブル時の対応についてFSSC22000の審査で気が付いた点についてお話しいたします。

PJR 審査員 伊藤 毅(いとう たけし):静岡県出身、農学修士。
前職は食品メーカーに勤務し、食品製造、品質保証、技術開発部門を担当する。ISO 22000の認証取得に携わり、その後は食品安全チームリーダーとして、食品安全マネジメントシステムの実務も経験。PJRでは食品規格の審査、および審査プログラムを担当する。 ワインをこよなく愛し、ワインエキスパートの試験に向けてコルクを抜く日々。