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第2回:最新の設備を備えていない工場でもFSSC 22000は取得できるのか?

FSSC 22000は、ISO 22000 + ISO/TS 22002-1(またはISO/TS22002-4)+追加要求事項 から構成されています。

ISO 22000では適用範囲について、「この規格は, フードチェーンの何らかの側面に関与し, かつ, 一貫して安全な製品を提供するシステムの実施を希望するすべての組織に, その規模に関係なく適用可能である。この規格のいかなる要求事項を満たす手段であっても, 内部及び/又は外部資源を用いて達成することができる」とあります。

一方、FSSC 22000では(現状、食品工場と包装容器のみですが)、前提条件プログラムがより明確にされています。そのため、特にハード面の要求事項を満たすことができないのではないかと考え、取得をあきらめてしまうというケースもたびたび耳にしてきました。

そこで今回は、「最新の設備を備えていない工場でもFSSC 22000は取得できるのか?」というテーマで考察したいと思います。

結論から申し上げると、この問いかけに対する回答は「イエス」です。

例えば、ISO/TS 22002-1には、「5.3内部構造及び備品」では「外部に開く扉は,使用しないときには閉めるか,又は仕切られていなければならない」という要求があります。ハードで対応するなら、さしずめ自動の高速シャッターを導入することでしょうか。ただ、この高速シャッターも、導入するサイズや台数によっては高額になります。もちろん高速シャッターを導入して、正しく運用することは非常に有効な手段です。ここで「正しく運用」と述べましたが、この点については次回以降でお話ししたいと思います。

さて話を戻します。食品工場の多くは、その優先順位に応じて高速シートシャッターを既に導入していることでしょう。しかし、すべての扉に高速シャッターを設置するのは容易なことではありません。また、建て増しや改築などを繰り返した工場では、動線や設備、コストの問題により、簡単には導入できない箇所も存在します。では、こうした工場でFSSC 22000を取得するにはどうすればよいのでしょうか?

ここでまず、「5.3 内部構造及び備品」という要求事項のそもそもの目的を考えてみましょう。それは製造ラインを含む工場内部の衛生環境を守るために、汚染源(粉塵や昆虫など)の侵入を防ぐ、ということになります。
こうした観点に立った場合、高速シートシャッターの導入の有無に関わらず、食品工場として以下のようなことをすでに実施しているのではないでしょうか。

  • 従業員への教育による開閉管理の徹底
  • 定期的な見回りによるルール順守の確認
  • 昆虫生息調査や空中落下菌検査による衛生環境の確認

これらは一例にすぎませんが、さまざまな手法を組み合わせることにより、いずれの組織においても食品工場の衛生環境を守っているはずです。つまり、安全な食品を提供できる衛生環境を維持しているのであれば、ハードの有無にかかわらず、FSSC 22000で必要とされる条件を満たしていると考えてよいでしょう。もちろん、新しい設備を導入するメリットが大きいことは確かです。ハード面で対応できないことを運用やルールといったソフト面で補う場合には、それだけの労力や教育が必要となるからです。

FSSC 22000の構築の中で、どのような手段をとるのか? 新たにハードを導入するかどうかは、すべてその食品工場の判断によります。
ただ、どのような判断を行うにせよ、安全な食品を提供するという目的だけは変わりません。また、ハード、ソフトに関わらず、常に安全な食品を提供するために、工場の衛生環境を保ち続けるという不断の努力が必要なことも言うまでもありません。私たちペリージョンソン レジストラーが、ハードの有無に関わらず、上記の目的に沿った仕組みが構築できているか、という点を重視して審査を行っているのもこのためです。

次回は本稿の内容をふまえ、ハザード分析と実際の審査で焦点になる部分について、実例を交えて考察していきたいと思います。FSSC 22000では前提条件プログラムにおいて適用除外が認められており、その際はハザード分析を実施し、文書化することが求められていますので、そのケーススタディについてもご期待いただければ幸いです。


PJR 審査員 伊藤 毅(いとう たけし):静岡県出身、農学修士。

前職は食品メーカーに勤務し、食品製造、品質保証、技術開発部門を担当する。ISO 22000の認証取得に携わり、その後は食品安全チームリーダーとして、食品安全マネジメントシステムの実務も経験。PJRでは食品規格の審査、および審査プログラムを担当する。 ワインをこよなく愛し、ワインエキスパートの試験に向けてコルクを抜く日々。

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