第8回:フタバ食品株式会社(栃木県)
ISO22000認証取得
<認定範囲>アイスクリーム類、氷菓、冷凍中華饅頭、マロングラッセ、ゼリーの製造
<カテゴリコード>C(加工1)、D(加工2)、E(加工3)
(左から)本田氏、齋藤(貞)氏、増渕氏、齊藤(龍)氏
(左から)本田氏、齋藤(貞)氏、増渕氏、齊藤(龍)氏
【参加者】
代表取締役社長
増渕 正二 (ますぶち しょうじ) 氏

取締役 企画部長
齊藤 龍樹 (さいとう りゅうき) 氏

取締役 品質管理部長
齋藤 貞大 (さいとう さだひろ) 氏

品質管理部 次長
本田 久治 (ほんだ ひさじ) 氏
※当記事はPJR発行のニュースレター「WORLD STANDARDS Review」に掲載された「認証組織インタビュー」を再編集したものです。内容、写真、参加者の役職などはインタビュー当時のものです。(インタビュー実施日:2012年9月14日)
ISO 22000の取組みを通じ、社内に横の連携を確立
フタバ食品株式会社は、栃木県宇都宮市に本社を置く、アイスクリームやマロングラッセ、冷凍中華饅頭などの製造販売を行っている食品メーカーである。同社はHACCPの取得を経て、2010年に本社と4つの工場でISO22000を同時に取得。「おいしさと楽しさ、安心と安全をとおして、笑顔のいきかう時間をつくること」を使命とし、食の安全管理に積極的に取り組んでいる。増渕社長とISO 22000の導入・運用の指揮を執られたみなさまにお話を伺った。

アレルゲン対策と取引拡大を目指し ISO22000の取得を決意

-- 御社は来年(2013年/本インタビューは2012年に取材)が更新審査で、ちょうど3年が経ちますが、ISO22000の認証取得を考えられた理由をお聞かせいただけますか?
増渕 正二 社長
増渕 正二 社長
増渕:認証取得の少し前になりますが、2007年頃に食品企業の隠ぺい問題などで「食の安心・安全」が社会的な話題になっていました。当社では、すでにHACCPは取っていましたが、今後それだけで対応できるのかという話になりました。
また、この頃、工場の稼働率を高めるために、大手小売店のPB商品も積極的にとろうということになり、問題が起きないようにするためにどうすべきか考えていました。
私たちの一番大きな課題は、アレルゲン問題なんですが、この件で大手量販店とも話し合い、品質管理に積極的に取り組み、より安全性を高めるためにISO 22000を取ろうと決めました。審査会社は、担当者からPJRがいいんじゃないかと推薦があり、割とすぐに決めました。
-- 営業が熱心だったということですかね(笑)。肝心の審査はいかがでしたか?
増渕:とても親身になってやってくれました。貴重なご指摘をたくさんいただきましたし、おかげで時間が短縮できたというか、スムースにいったと思います。そういう意味でとてもよかったですね。

本社と4工場を同時に立上げ

-- ありがとうございます。御社はHACCPを先に取得されていたので、ISO22000の準備も早かったと思いますが、システム構築はいかがでしたか?
齋藤 貞大 取締役
齋藤 貞大 取締役
齋藤(貞):4つの工場(喜連川工場・下栗工場・関西工場・コンフェクショナリー下栗工場)と本社の同時立上げは、それぞれの工場のレベル合わせが大変でした。
工場によって設備は違いますし、状況はもちろん、考え方、手順もそれぞれですから。本当は、1つの工場で立ち上げてから展開していく方がやりやすかったとは思うんですけど、社長が一斉にということでしたので、その点がきつかったですね(笑)。
-- 大変なことは一度に済ませた方がよいという社長のご判断だと思いますが、結果としてよい選択だったのではないでしょうか?
齋藤(貞):今振り返るとそうかもしれませんね(笑)。それまでは工場間のつながりというのはほとんどなかったのですが、ISO取得に向けてやりとりが増えました。月に一度、各工場から召集してリーダー会議を行うのですが、それぞれの工場の問題に共通する部分があることがわかったり、そこで結論まで出せるようになりました。
-- 共通の用語、共通の目標ができるということで、会社に一体感が生まれる。これはISO取得の利点の1つですね。他に気がつかれた点はありますか?
増渕:社員一人ひとりが問題意識、改善意識を持つようになったと思います。また、改善を繰り返し行うことによって、全体のレベルが上がりました。
ISO22000の導入当初は、社員が自ら勉強する雰囲気に欠けているのではと、歯がゆい思いもしましたが、社員が勉強できる雰囲気づくりが大切だと気づき、まずは管理職、オペレーター以上には衛生研修を受けてもらうことにしました。こうやって改善を繰り返し行うことで、社員も成長し、よりよい商品も生まれるんだと思います。

ISO22000に取り組む中で 組織に横のつながりが生まれる

-- この3年でどのような変化がありましたか?
齊藤 龍樹 取締役
齊藤 龍樹 取締役
増渕:当社はどちらかというと縦割の組織なんですが、そこに「食品安全チーム」、本社「安全チーム」、「営業」などが入ることで「横の連携」ができました。
例えば、商品の温度管理や配送の問題などについて、安全チームが議論し、新商品の開発なども、各安全チームの人たちがチェックします。そうすることで、今まで交流のなかった人たちが横につながっていきました。これは目を見張る大きな変化でした。

齊藤(龍):「ラインテスト運営チーム」では、研究開発から企画、生産まで、全部横でつながります。その流れで新商品が作られますが、そこでの「表示の誤り」などがなくなってきました。
まだまだ課題は残っていますが、この仕組みはとても効果的でした。
-- 「ラインテスト運営チーム」とはどのようなものですか?
本田 久治 品質管理部次長
本田 久治 品質管理部次長
本田:ISO22000を導入するにあたり、「安全チーム」を組織したのですが、重点的に「商品の完成度を上げる」ということと、「表示の間違いをなくす」ということの2点に絞って活動するための「ラインテスト運営チーム」を作りました。
当社では、毎年、新商品を100品近く投入していますが、すべてそのチームの協議を経たうえで、工場のラインに流れるという仕組みにしています。基本的には、ISO22000の活動で危害分析が中心になります。ラインに乗せてから不具合が出ては困るので、その前に予防するという観点から、テスト運営チームで危害分析をやり、「ちょっとまずいかな?」ということを話し合って解決していく。そのうえで、ラインに乗せていくという活動が、「ラインテスト運営チーム」によって、各部横断的にできるようになりました。当然、品質管理面からもクレームが少なくなり、非常に有意義な活動でした。

現場に改善活動が定着

-- 「不具合品」を「不良品」にしない。どの企業でも重要な課題だと思いますが、御社ではどのような対策をされていますか?
本田:やはり、品質管理部のチェックだけではなくなりませんので、「ラインテスト運営チーム」も含め、現場のみなさんも、商品の不具合を未然に防ぐために奮闘してくれています。そういった努力を3年間続けています。
具体的には、毎週定例会議を行い、協議をしています。今では通常業務として定着したので、あとは現場の方々によって、システムが磨かれ、仕上がっていくと思います。

増渕:当社では、年間で数多くの新商品を出していますが、研究段階で作った商品が量産体制の機械で作ったら、ちょっと違った、なんてことでは困ります。そのために「ラインテスト」というものを作り、各部から集まった人たちが実際現場で作るときに、商品に問題があるかどうか、新商品として売れるかどうかをチェックし、提案します。
各部でチェック、改善するというやり方に、当初は社員もわずらわしさを感じていたと思いますが、今ではそういった積み重ねが改善につながると納得していると思います。
-- PDCAがしっかりと定着していますね。 最後に、今後の展望についてお聞かせください。
増渕:これからも、社員が積極的に働けるような環境づくりに力を入れていこうと思います。今後は、海外への輸出展開を考えておりますので、ISO22000のグレードアップを視野に、よりよい商品の提供に努めてまいります。
-- 国内はもとより、ワールドワイドにますますご活躍、ご発展されますよう、祈念しております。本日はありがとうございました。
【取材を終えて】
フタバ食品株式会社 外観
今回、アイスの「サクレ」やマロングラッセなどで知られる フタバ食品様を訪れ、明確な目的意識をもってISO22000の構築に取り組まれていたことを伺い、トップのリーダーシップの重要性を再認識しました。
「食の安全」と一言でいっても、現場の方々の並々ならぬ配慮がそこにはあります。地道な取組みの一つひとつが消費者にとっていかに重要であり、また、その取組みにISOが大きく役立っていることを伺い、認証機関としての責任をあらためて痛感いたしました。