第7回:ヨシワ工業株式会社(広島県)
ISO/TS 16949:2009、ISO 9001:2008、認証取得
<ISO/TS 16949:2009>
認証取得サイト:本社/海田工場/初見工場/六日市工場
認証範囲:鋳鉄部品(ブレーキディスクロータ、フライホイール)の設計・開発及び製造 鋳鉄部品(エンジンブラケット、ガセットプレート、ブレーキドラムなど)の製造
<ISO9001:2008>
認証取得サイト:本社/海田工場
認証範囲:自動車用鋳鉄部品の設計・開発及び製造認証範囲:スピンドル、コレットチャック、ゲージなどの工作機械用金属部品の製造
<ISO/TS 16949:2009>
認証取得サイト:本社/海田工場/初見工場/六日市工場
認証範囲:鋳鉄部品(ブレーキディスクロータ、フライホイール)の設計・開発及び製造 鋳鉄部品(エンジンブラケット、ガセットプレート、ブレーキドラムなど)の製造
<ISO9001:2008>
認証取得サイト:本社/海田工場
認証範囲:自動車用鋳鉄部品の設計・開発及び製造認証範囲:スピンドル、コレットチャック、ゲージなどの工作機械用金属部品の製造

(左から)三浦 氏、山下 氏、日高 氏
【参加者】 |
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代表取締役社長 山下 耕司(やました こうじ)氏 品質保証部 部長 日高 孝司(ひだか たかし)氏 品質保証部 課長 三浦 健(みうら たけし)氏 |
※当記事はPJR発行のニュースレター「WORLD STANDARDS Review」に掲載された「認証組織インタビュー」を再編集したものです。内容、写真、参加者の役職などはインタビュー当時のものです。(インタビュー実施日:2014年1月31日)

ヨシワ工業株式会社は1937年に広島鋳物工業株式会社として設立された国内における鋳物トップメーカーのひとつである。現在は主に自動車部品(ディスク、フライホィール、ギヤケース、シリンダー、マウンティングなど)を製造し、1998年の主要取引先による品質保証優良認定の取得を皮切りにISO9002、ISO9001、ISO14001、ISO/TS16949を立てつづけに認証取得をするなど、品質向上のみならず積極的にマネジメントシステム構築とその活用に取り組んでいる。顧客に求められる品質や環境が変化を続ける中での同社の多様な取組みについて、山下 耕司 代表取締役社長、品質保証部 日高 孝司 部長、品質保証部 三浦 健 課長にお話を伺った。
0からのシステム構築、そして短期間での認証取得へ
-- 2000年にISO9002/QS-9000、2002年にISO9001/QS-9000、ISO14001、2004年にISO/TS16949と、とても早いペースで認証を取得されていますが、何かきっかけがあったのでしょうか。

山下 耕司 代表取締役社長

日高部長
-- 認証取得は社内システムの構築に効果がありましたか?
山下:この10〜15年でパソコンの普及にともなって、標準や手順をアップデートし、それを3拠点で即座に共有できる環境が整いました。認証取得やそれにともなう外部審査もマジメントシステムの整備という面ではかなり効果を感じています。PJRの審査員の方にも不適合の指摘を受けることもありますが、3拠点すべての現場を端から端まで見ていただいている実感もあるので内容も納得していますし、それを改善活動へと活かせていると思います。ただ、われわれの本業はマネジメントシステムを整備することではなく、それを活用していくことです。整備は進んでいますが、その意識が全社に浸透しているかという意味ではまだまだだと思います。そのため、以前は時期を決めて集中的に行っていた内部監査を、2012年からは年間を通して実施しています。それまでは問題が見つかった場合でも、監査期間を決めていると根本的な解決までたどり着けないケースがあり、それを本質的に改善するために変更しました。

三浦課長
-- 現場の意識にも変化が生まれたのでしょうか。
三浦:内部監査は担当を固定せずに持ち回りで担当しています。内部監査員を経験した社員から意識が変わっていく傾向があります。それまでは説明する側だった社員が、他部署で業務を確認し質問することで、担当部署に戻った際に「こういうことだったのか」と気づくこともあるようです。
多様化する顧客のニーズとグローバル調達に対応
-- 社会的にも大きな変化のあった10年でしたが。
山下:自動車メーカーのグローバル調達とニーズの多様化がかなり進みましたね。以前はメーカーとの直接取引がほとんどでしたが、Tier-1を通した取引も増えました。その際は、認証取得は品質を保証するものとして大きな要素となっていると感じます。また、少品種を大量に生産する時代から、多くの取引先に対し多くの種類を少しずつ生産する時代になりました。部品の点数が増えることにより、それぞれの開発・育成や変更対応などの仕事量も膨大となります。マネジメントシステムが構築されていたから対応できていると考えると、顧客のニーズもあったとはいえ、いいタイミングで取り組めました。
三浦:品質への取組みとしては、この10年で新しい規格が増えたという点が大きいです。お客様が直接工場まで指導に来られることもあり、求められているものが変化していることを実感しています。
日高:性能品質だけでなく外観品質への要求が非常に高くなったのも大きな変化です。従来、鋳物で作られた部品は外から見えない部分に使われることが多く、外観に対する要求はさほど高くありませんでした。しかし自動車の軽量化などが進むにつれ、部品が外から見える部分に使われることも増えたことから、サビについてもユーザーから苦情が寄せられるようになっています。
山下:時代の変化で鋳物を目にする機会が減ったんでしょうね。鋳物は錆びることでそれ以上の腐食を防ぐという面もあるのですが、それを知らない方も増えたのでしょう。また、小さな傷の有無で、ユーザーが間接的に品質を評価する可能性があることから、仕上げとその検査でかなりの工数を投入しています。仕上げ領域は外注している部分もありますが、トータルでの品質保証という面からも外注先にも認証取得を推奨しています。
三浦:品質への取組みとしては、この10年で新しい規格が増えたという点が大きいです。お客様が直接工場まで指導に来られることもあり、求められているものが変化していることを実感しています。
日高:性能品質だけでなく外観品質への要求が非常に高くなったのも大きな変化です。従来、鋳物で作られた部品は外から見えない部分に使われることが多く、外観に対する要求はさほど高くありませんでした。しかし自動車の軽量化などが進むにつれ、部品が外から見える部分に使われることも増えたことから、サビについてもユーザーから苦情が寄せられるようになっています。
山下:時代の変化で鋳物を目にする機会が減ったんでしょうね。鋳物は錆びることでそれ以上の腐食を防ぐという面もあるのですが、それを知らない方も増えたのでしょう。また、小さな傷の有無で、ユーザーが間接的に品質を評価する可能性があることから、仕上げとその検査でかなりの工数を投入しています。仕上げ領域は外注している部分もありますが、トータルでの品質保証という面からも外注先にも認証取得を推奨しています。
本業を通じたEMS活動で環境負荷削減とコスト削減を両立
-- 御社ではISO14001も取得されていますが、環境面で特に気をつかわれている部分があればお聞かせください。

インタビューの様子
山下:環境負荷を下げることはすなわちコストを削減することにつながりますから、さまざまな取
組みをしています。例えば、鋳造業にかかる主なコストとしては電力、動力、産業廃棄物(産廃)にかかるものがあります。電力の部分では、デマンドコントローラを使用して毎日の使用量を意識しているだけでなく、3台使用していた集塵機を1台削減し、エアーを使って搬送していた装置をリンク機構によるからくり改善でノーエネルギーに変更するなどで、電力契約料金を見直してコストを削減できました。また、キュポラメーカーと協力して鋳造工場のキュポラをノーライニングキュポラに変更したのですが、これは一時的に大きな出費となったものの、耐火材による補修が不要になり産廃も大幅に削減できたことを考えれば、一石二鳥ならぬ一石多鳥でした。この効果は鋳造学会でも発表したほどです。2つある鋳造工場のうち片方の工場で先行して取り組み、今夏には残りの工場でも実施する予定です。また、日ごろ取り組んでいる5Sや品質改善も結果的には産廃を減らすことにつながっています。
-- まさに本業を通じたEMS活動をされているのですね。
山下:コストや品質の改善に社員一人ひとりが日常的に取り組んでいます。それは結果的に環境改善につながります。環境改善ということをあえて意識することなく、全員参加で環境に貢献していると言えると思います。
-- 多様な取組みをされていますが、この20年を振り返って特にご苦労されたのはどのような点でしょうか。
日高:最初の品質保証優良認定制度に取り組んだ当時、鋳造技術は職人の経験によって支えられていた部分も多く、業務の標準化・文書化が進んでいませんでした。そのため、職人の感覚に頼っていた部分の定量化という意味で導入は大変でした。
山下:ニーズが多様化し、新しい規格も増えるにつれ、実は不良率が高くなってしまった時期もありました。しかし、マネジメントシステムが社内にも定着したこの5〜6年は品質も急激に向上し、トータルの不良率は下がっています。不良の原因の究明と対策だけでなく、開発の立ち上げ時点でそれを織り込むなど、PDCAの手法を活用しているのが良い結果に結びついていると思います。今後は、品質向上だけでなくキュポラの廃熱利用率の向上など、環境にもメリットのある取組みを続けていきたいですね。
山下:ニーズが多様化し、新しい規格も増えるにつれ、実は不良率が高くなってしまった時期もありました。しかし、マネジメントシステムが社内にも定着したこの5〜6年は品質も急激に向上し、トータルの不良率は下がっています。不良の原因の究明と対策だけでなく、開発の立ち上げ時点でそれを織り込むなど、PDCAの手法を活用しているのが良い結果に結びついていると思います。今後は、品質向上だけでなくキュポラの廃熱利用率の向上など、環境にもメリットのある取組みを続けていきたいですね。
-- マネジメントシステムを手法として活用されている点が素晴らしいと思います。本日はありがとうございました。
【取材を終えて】
今回、ヨシワ工業様からお話を聞かせていただき、日本古来の技術である鋳造を、最先端の精度の製品に作り上げるその技術力はまさしく「匠」の業と最新テクノロジーの融合であると再認識しました。また、多くの勘所が介在する技術をしっかりと安定した生産につなげていること、その業の伝承のためにいち早くマネジメントシステに取り組まれた、決断力と先を見る目におおいに感嘆した取材となりました。