第3回:林兼産業株式会社 食品事業部 都城工場(宮崎県都城市)
ISO22000:2005認証取得/食品加工業
都城工場
都城工場
【行動憲章】
1.私たちは、お客様へ安全な製品とサービスを提供します。
2.私たちは、お客様の声を大切にし、お客様の満足と安心が得られるように最大限の努力をします。
3.私たちは、法令を遵守するとともに、高い倫理観をもって事業活動を行います。
4.私たちは、自然環境の保全に積極的に取り組みます。
5.私たちは、良き企業市民として積極的に社会貢献活動を行います。
6.私たちは、従業員一人ひとりの人権を尊重して公正に処遇し、職場環境の向上に努めます。
7.私たちは、国際社会の一員として行動し、関係地域の発展に努めます。
聞き手:PJR

「農場から工場まで」の食の安全を実践 -健康で豊かな社会づくりを目指して-
宮崎県都城市に位置する、林兼産業グループの3事業所、林兼産業株式会社 都城工場(加工)、都城ウエルネスミート株式会社(と畜)、キリシマドリームファーム株式会社(飼育)では、「農場から工場まで」のフードチェーンの一括管理を目指し、ISO22000:20005の認証を取得した。

お客様を最優先に考える同社の取組みについて、佐久間 秀俊 執行役員にお話を伺った。
-- ISO22000導入の経緯
PJR:ISO22000を取得しようと考えた動機について教えていただけますか?

佐久間:今回ISO22000の取得を考えたのは、私たち林兼産業グループの『コンプライアンス経営宣言』の「行動憲章」を具体的に実現するための一つの手段として、ISO22000(食品安全マネジメントシステム)が最適ではないかと考えたからです。

PJR:ISO22000の何がよいと考えられたのでしょう。期待された点などについて教えていただけますか?

佐久間:今回は林兼産業グループの宮崎県都城地区3社で取得しました。

キリシマドリームファーム安久農場
キリシマドリームファーム安久農場
一つ目は都城のキリシマドリームファーム株式会社。ここでは「霧島黒豚」の飼育をしています。 もう一つは「霧島黒豚」などのと畜を行なっている都城市食肉センターを管理運営している、都城ウエルネスミート株式会社です。 そして最後に、生産した豚を加工・販売する林兼産業株式会社の都城工場。ここは枝肉からテーブルミートに加工したりする部門と加工品を製造包装をする部門があります。



食肉センター
食肉センター
ISO22000ですと、農場も取得できますし、と畜場や加工場もとれます。ISO9001ですと農場での取得は難しいので、「農場から食卓まで」という一連の流れで取得したいと考え、ISO22000を選びました。また、ISO22000を取得することで、食の安全に対する地域全体の意識を高め、消費者の信頼を得ることで、地域全体の産業活性化につながると考えました。私たちの「行動憲章」を実現する上で適していると考えました。
-- 安全と安心を一括管理
PJR:やはりHACCPですと適用される業種が限定されるので、ISO22000で全体を取れるというのは一つのメリットだと思います。

霧島黒豚加工製品
霧島黒豚加工製品
佐久間:そうですね。特に当社の場合は、メイン商材として「霧島黒豚」を販売していますが、一連の流れをすべて押さえられるので、商品の安全性を確保するという点で強みになります。

PJR:食品で最初から最後までのチェーンを管理していくというのは、最大の課題ですよね。最近、食品に関するさまざまな問題がありますが、最終製品を販売する企業が全工程でISO22000を取得するというのは、本当にすばらしいことだと思います。消費者のみなさまへの期待にも十分に応えられる体制作りだと思います。

佐久間:と場だけ、あるいは加工場だけであればISOを取得している企業もあるでしょうが、農場、と畜場、テーブルミートの加工場、製品にする加工場といった一連の流れで認証を取得するのは、私どもがおそらく国内では初めてではないでしょうか。一連の流れで取得したのが国内初というのも、当社にとっては一つのメリットでした。

PJR:そうですね。おそらく初めてだと思います。他に例はないと思います。
-- 認証取得の苦労
PJR:初めてということで、営業面、広報面などでメリットもあったかと思いますが、初めてだからこそ難しい点もたくさんあったと思います。その辺はいかがですか。

佐久間 秀俊 執行役員
佐久間 秀俊 執行役員
佐久間:都城工場はHACCPの認定工場なので問題がなかったんですけど、と畜場や農場関係は、一からのスタートでした。

キリシマドリームファームの方も、3年位前から、HACCPについて農水省の指導要領に沿った勉強会を毎月開いています。

また、都城ウエルネスミート株式会社の方でも、宮崎県都城食肉衛生検査所から、さまざまな衛生的な指導を受けています。まったくのゼロからの取組みではなくて、ある程度の下地があったので、その部分は取り組みやすかったんです。

PJR:今トレーサビリティですとか、いろいろな問題が世間を騒がせていますけど、そういう意味では、育てて、商品になるまでを、グループ会社で一括管理できるということは、消費者としてはものすごく安心できることですね。食品では、品質や食べておいしいなどもありますが、今一番関心があるのは「安心」ですよね。

佐久間:やはり「安心」と「安全」ですね。

PJR:難しいのは、「安全」だからとわかっていても安心しないというところです。そういう意味で、消費者の方にISO22000を導入して、プロセスを全部管理しているというメッセージを、みなさんが直接消費者に送るのはとても重要だと思います。
-- 審査の感想
PJR:当社の審査に対しては、どのような評価をいただいていますか。

佐久間:まず貴社は審査実績もありますし、きちんとした審査をやってくれるんではないだろうかと考えました。

PJR:ありがとうございます。

佐久間:私どももこういう審査を受けるのは初めてだったので、他の認証機関がどういう審査を行うのかはまったくわかりませんが、審査を受ける中で、軽微な不適合などに対して、やはりこれが不適合なのかという非常にわかりやすい説明でした。説明がわかりやすく、当社としても理解しやすかったので、その後の是正の取組みが非常にやりやすかったです。不適合とか指摘事項など、指摘は結構ありましたけども、いろいろ直していく、改善していく取組みが非常にスムーズにできたというところがよかったなと思います。
-- 安全に対する意識の変化
PJR:ISO22000を導入してから、社内の従業員を含めて、雰囲気が変わったとか、よくなったというようなところはおありでしょうか?

佐久間:従業員一人ひとりの安全に対する意識が、取組み前とではずいぶん変わったなと、感じています。それぞれの意識改革になったのではないかということですね。今までは手順で決められたことだから守るという取組み方だったのが、なぜそれをしなくてはならないかを理解するようになった。これは大きな変化だと思います。

PJR:それはすごくいいですね。不祥事や事故というのは、だいたい技術専門分野ではなくマネジメントで起こるんです。マネジメントが弱いと起こりやすく、実際にその専門技術で管理しているところではあまり起こりません。

本来やらなければならない手順じゃなく、人間なのでちょっと違う風にやっちゃうときもあるわけですよね。で、それは止められないっていうことのなかで、どうしてこれをやっているかがわかっていると、ここまではいいけどこれはだめだっていうのがわかってくる。

みなさんがそういうご理解の下、構築され、運用されていただくと本当に成果があがると思いますし、そういうお手伝いを一緒にさせていただけるというのは当社にとっても一つの誇りであり、喜びですね。

本日はありがとうございました。