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第5回:対策のやりすぎになっていませんか?―是正処置の効果の確認のポイント

みなさんもご存じの通り、FSSC 22000はそれ自体が予防処置の手段です。もし完璧なFSSC 22000のシステムを構築して運用していれば、食品安全に問題のある製品がつくられることはなく、製品の食品安全トラブルによる是正処置を行うこともないでしょう。しかし実際は、工場の運営では日々大小さまざまな問題や課題に直面し、それに逐次対応するということも多いのではないでしょうか。もちろん、最初から問題が発生しないようにするのが理想ではありますが、少なくとも同じ問題を再び発生させないようにしなければなりません。それが「是正処置」です。今回は是正処置を行う際のポイントについてお話しします。

食品安全に限らず問題が発生した場合、工場では是正処置を行わなければなりません。ところがさまざまな問題に対する是正処置を積み重ねていくうちに、チェックする項目やチェックの回数、さらに新しいルールや手間などが増えていってしまい、現場の負担が大きくなっているケースも少なくありません。これは是正処置の「やりすぎ」と言えるでしょう。一方で是正処置が不十分であったら問題が再び発生する可能性が残ってしまいます。特に顧客クレームでは、行われた是正処置の内容が顧客にも納得してもらえる内容であることも必要です。そのため是正処置をどこまでやるのかを見極めるのは簡単ではありません。

ここでFSSC 22000の一部であるISO 22000の要求事項を見てみましょう。 ISO 22000 7.10.2 是正処置では、検出した不適合の原因を明確にし、除去し、かつ再発を防止し、さらに、不適合が発生した後に工程又はシステムを管理下に戻すための適切な処置を規定する「文書化された手順」が求められています(以下抜粋)。

a)不適合(顧客の苦情を含む)をレビューする。
b)管理が損なわれる方向にあることを示す可能性があるモニタリング結果の傾向をレビューする。
c)不適合の原因を特定する。
d)不適合が再発しないことを確実にするための処置の必要性を評価する。
e)必要な処置を決定し,実施する。
f)とられた是正処置の結果を記録する。
g)是正処置が有効であることを確実にするため,とられた是正処置をレビューする。

「ISO 22000 7.10.2 是正処置」

問題が顕在化した場合、要求事項に従った是正処置の進め方は、おおまかに以下のような段階にわけることができます。

(1) 原因分析(a, c)
(2) 対策の立案(d, e)
(3) 対策の実施(e, f)
(4) 効果の確認(g)
今回着目していただきたい段階は(4)の「効果の確認(g)」です。
b)項はISO 9001には存在しない、ISO 22000独特の要求事項です。この要求事項があえて「是正処置」に含まれていることが食品安全規格の概念を特徴的に表しています。これについてはまた別の機会にお話したいと思います。

例として、作業終了時に使用する自動洗浄機で、器具の洗浄不足の問題が発生したケースを考えてみましょう。
洗浄不足の原因分析の結果、現行の器具の自動洗浄時間の設定では汚れを落としきれていないことがわかったため、対策として自動洗浄の設定時間を8分間長くすることにして実施しました。では是正処置の効果を確認する際のポイントはどんなことが挙げられるでしょうか。

① 実施した対策がきちんと運用されているか

立案した対策が現場で行われていなかったら、問題の再発に直結します。洗浄不足という問題に対する是正処置として、洗浄時間を従来より8分間長くしたのであれば、実際に長くした設定で運用できているのかを確認します。

② 実施した対策の効果が出ているか

洗浄機の設定時間を8分間長くすることで、本当に器具がしっかりと洗浄されているかを確認します。もし長くした設定時間でもまだ器具の洗浄が十分にできていなかったら、その対策は意味をなしません。

②+α 実施した対策が過剰に行われていないか

②の確認において、設定時間を8分間長くすることで十分な洗浄効果があると判断されても、それにより多くのコスト(水や動力、人手)がかかることになります。たとえ1日に8分間であってもこれが1カ月や1年続くとなると、コストも増大します。
もしかしたら、追加する洗浄時間は8分ではなく4分程度で必要とされる洗浄効果が得られるかもしれません。最初は、迅速な問題解決のため対策の確実な洗浄効果を得るように長めの時間設定をすることもあると思いますが、特定のタイミングで必要最小限の洗浄時間設定の見直しを検討してみはいかがでしょうか。

是正処置の対策立案時には、一刻も早く解決を図るために、対策が過剰になってしまうことが多々あります。また、どの工場でも是正処置で効果の確認を上記のポイント②までは行っても、その先の「+α」の部分まではなかなか行えないということもあるでしょう。しかし、例のような洗浄時間にせよ、チェック項目の数にせよ、必要最小限のコストで必要なだけの効果がある対策をとっていくことも大切です。みなさんが是正処置の効果を確認する際には、その対策が「やりすぎでないのか?という視点」も持ってみてください。


PJR 審査員 伊藤 毅(いとう たけし):静岡県出身、農学修士。PJR審査員。

前職は食品メーカーに勤務し、食品製造、品質保証、技術開発部門を担当する。ISO 22000の認証取得に携わり、その後は食品安全チームリーダーとして、食品安全マネジメントシステムの実務も経験。PJRでは食品規格の審査、および審査プログラムを担当する。
より充実した食生活を満喫するため、今年はチーズ検定に挑戦予定。

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