【連載】FSSC 22000審査のポイント
第8回:CCPの許容限界の逸脱を勘違いしていませんか?



食品工場の審査に伺うと、CCPの許容限界の逸脱について勘違いをされている方をときどきお見かけします。そんな時、私は「CCPの許容限界の逸脱とはどのような状態を指すのか」とお尋ねします。ポイントは「CCPの工程で、許容可能な水準を逸脱している製品が検出されて製造ラインから取り除かれることは、HACCPが正常に運用されている状態である」ということです。

先日の審査先で伺った食品工場では、金属探知機での検査をCCPの工程としていました。モニタリングの手順は、パウチ包装した製品をすべてベルトコンベアで金属探知機に通過させるというものです。もちろん、製造の開始前と終了後にテストピースで金属探知機の作動確認を行っています。

金属探知機が検出した製品には、食品安全を脅かす大きさの金属が混入しているかもしれません。そのため、この食品工場では金属探知機が反応した場合を、CCPの許容限界の逸脱としていました。そして逸脱時の処置として、その製品と同じロットのものを金属探知機にもう一度通過させることで安全性を再確認していたのです。

しかし、これはナンセンスです。
確かに金属探知機で排斥された製品は、食品安全を脅かす可能性がある許容可能な水準を逸脱したものです。それと同時に、そのような製品が金属探知機で検出されるということは、金属探知機が想定通りに正しく働き、製品が正しくモニタリングされているということなのです。だとすれば、排斥された製品と同じロットの製品は、改めて金属探知機を通過させるまでもなく安全だと言えます。この食品工場は、排斥された製品そのものや、製品が排斥される状態をCCPの許容限界の逸脱としてとらえるという勘違いをしていたのです。

ここで、CCPの工程を決めた際の危害分析の考え方を整理しましょう。

1.正しく作動確認をした金属探知機を通過した製品は安全である。

CCPを決定した時にテストピースのサイズは、食品安全上許容できる金属異物の上限サイズとしました。また、テストピースのサイズより小さな金属異物の検査・検出は、他の設備の点検や製品の取扱いといった前提条件プログラムのような衛生管理で行うと決めているはずです。

2.製品を金属探知機に通過させること自体は、金属探知機のCCPでのモニタリングではない。

本来、CCPのモニタリングで確認しなければならないことは、金属探知機の作動確認を正しく行うことです。正しく作動確認がなされた金属探知機に製品を通過させることで、製品の食品安全が保証されるのです。

金属探知機で排斥された製品は、安全でない可能性がありますので、管理が必要です。ただ、あくまでもそれは安全でない可能性があると製品だということに過ぎません。では、CCPの許容限界の逸脱とは一体何なのか。それは、常に正確なモニタリングが行えなくなる状態を指すのです。

今回の金属探知機のケースでは、以下のような状態が例として挙げられます。

  • 金属探知機に不具合が生じ、決められたテストピースが反応しない、または排斥できない。
  • 作動確認を行うのを忘れた。または、決められたテストピース以外のもので作動確認をしたなど、手順通りに行わなかった。

もしもCCPの許容限界を逸脱した場合は製品の安全が保証できませんから、あらかじめ対応手順を決めておかねばなりません。もちろん、一番望ましいのは、そもそもCCPの許容限界を逸脱するような事態を起こさないことです。そこで次回は、CCPの許容限界の逸脱をしないためのヒントをお話します。キーワードは「検証」です。次回もよろしくお願いします。

PJR 審査員 伊藤 毅(いとう たけし):静岡県出身、農学修士。
前職は食品メーカーに勤務し、食品製造、品質保証、技術開発部門を担当する。ISO 22000の認証取得に携わり、その後は食品安全チームリーダーとして、食品安全マネジメントシステムの実務も経験。PJRでは食品規格の審査、および審査プログラムを担当する。 ワインをこよなく愛し、ワインエキスパートの試験に向けてコルクを抜く日々。