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第6回:ハザード分析と適切なCCPの定め方

前回の「ハザード分析を可能にするための準備段階」では、製品と原料についての科学や法令・規制要求事項に関する知識の他、工場の設備や工程の経験も重要だとご説明しました。今回はハザード分析について解説します。

HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)とは、HA(ハザード分析)とCCP(重要管理点)から成り立っています。このハザード分析こそ、HACCPの中核に他なりません。ハザード分析は、次の4つのステップで行います。

  1. すべてのハザードを明確化し、それぞれのハザードについて安全な状態(許容水準)を決定する。
  2. ハザードの健康への悪影響の大きさと起こりやすさに基づいて、それぞれのハザードの重要性を評価する。
  3. ハザードによる悪影響が製品に起こらないように管理手段を決定する。
  4. CCPを決定する(ISO 22000やFSSC 22000では、オペレーションPRPも決めます)。

ハザード分析では最終的にCCPの工程を決定します。CCPは、自分たちの製品の安全を保証するための最も大切な工程です。この決定が的外れなものであると、せっかく構築する食品安全の取組みがすべて台なしになってしまいます。

ここで、今までの準備段階で集めた科学的根拠や多くの経験、知識を十分に生かしてハザード分析を行うことが、適切なCCPの工程を決定するポイントとなります。

それでは、食品工場の原料受入工程を例に、先ほどの4つのステップに沿って考えてみましょう。

1.「原料に金属異物が混入する」というハザードが挙げられました。公的な指針や過去のクレーム・データを参照して、一定以上の大きさの金属異物が混入しないように管理できていれば、製品に対して安全な状態(許容水準)であると定めました。

2.あらかじめ工場で決めておいたやり方で、許容水準を超えるような金属片が最終製品に混入してしまった場合の健康への悪影響の大きさと起こりやすさを評価した結果、その金属片は重要ハザードとして管理する必要があると判断されました。

3.原料受入の工程では、金属異物を取り除くことができないので管理手段はありませんでした。しかし、後工程での管理手段として金属探知機を導入していました。そのためこの工程の金属異物のハザードは、後工程の金属探知で管理することにしました。

4.原料受入の工程は、金属異物を確認したり、取り除くことはできないため、CCPの工程になりませんでした。最終的に後工程の金属探知をCCPの工程としました。

さて、食品工場のCCPとして金属探知を特定する場合があります。金属探知機ですべての製品を検査すれば、食品に一定以上の大きさの鉄などの金属異物が混入していても取り除くことができます。そのため金属探知はCCPの工程として相応しいように思えます。

ここで少し考えてみましょう。確かに金属探知がCCPの工程となることは十分ありえます。しかし、金属探知だからCCPの工程だと短絡的に決めつけてはいないでしょうか?

そもそもCCPの工程は、決定した許容水準を満たさなくてはいけませんが、他にハザードをコントロールしている工程があるかもしれません。

金属探知機は、重大な事故が起きるかもしれない金属異物の混入というハザードの許容水準を担保できるのであれば、CCPの工程として妥当であると考えることができます。しかし、同じ工程内に金属探知よりも確実な別の工程があれば、その工程がCCPとしては適切かもしれません。もちろん、食品工場によっては金属探知と別の工程の両方をCCPの工程とする場合もあるでしょう。

では、適切なCCPを決定するためにはどうしたらよいのでしょうか?
これまでの連載では、多方面からのメンバーや情報が必要だとご説明しました。これは多くの部門が参加した食品安全チームが、科学的な根拠に基づいてブレーンストーミングすることで、一人では見落としがちな工程の強みや弱みに気づくことができるからです。ハザード分析では最終的にCCPの工程を決定しますが、より多くの側面からの情報と意見を取りいれることで、その食品工場の実態にあったCCPが決定できるはずです。

今回はハザード分析によりCCPの工程を決定するまでのお話でした。次回はCCPの工程の構築と運用について解説いたします。


PJR 審査員 伊藤 毅(いとう たけし):静岡県出身、農学修士。

前職は食品メーカーに勤務し、食品製造、品質保証、技術開発部門を担当する。ISO 22000の認証取得に携わり、その後は食品安全チームリーダーとして、食品安全マネジメントシステムの実務も経験。PJRでは食品規格の審査、および審査プログラムを担当する。 ワインをこよなく愛し、ワインエキスパートの試験に向けてコルクを抜く日々。

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