【連載】FSSC 22000審査のポイント
第3回:FSSC 22000 機械設備の洗浄とその確認はどこまでやるべきか?



前提条件プログラムを策定・運用するにあたり、「基準をどう定め、実施するか」という点は、非常に重要なポイントとなります。そこでまず本題に入る前に、CCPとオペレーションPRPの違いについておさらいをしておきましょう。
規格要求において、CCPでは許容限界がありますが、オペレーションPRPについては許容限界がありません。つまり、オペレーションPRPによってハザードを管理する場合、必ずこのレベルを維持しなければ食品安全に致命的なダメージが生じるという定量値が存在しないため、基準をどこに置けばよいのか定めづらくなります。

実際、機械設備の洗浄をどこまでやるかという基準は、それぞれの会社ごと、ラインの場所や特性によってさまざまでしょう。例えば、「目で見て汚れがないことをチェックする」、「洗った後にATPのふき取り検査を実施する」、「CIP洗浄後に導電率を確認する」など、ケースバイケースだと思います。

では、どのような考え方で基準を策定するのが適切なのでしょうか。ここで登場するのが、これまでの連載でも何度か触れてきたハザード分析です。このハザード分析の考えを応用することにより、洗浄をどこまでやるのかという問いに対する答えがみつかるでしょう。ハザード分析の手法は、合理的に考えて起こることが予測される全てのハザードを挙げて、安全な食品を製造する上で、除去または低減されることが不可欠であるハザードの分析を行うことです。
今回の洗浄というテーマでは、機械設備に付着しているアレルゲンや硬質異物の残存、残りかすからの有害微生物の増殖などのハザードを管理するために、洗浄という手段を選択するということになります。では、どのように考えていくのか具体的に確認します。

食品工場では、洗浄の作業は日常的に行われています。一例として、まだ土のついている野菜の容器と、加熱料理後の充填工程までのコンベアを比較してみましょう。土のついている野菜の容器であれば、この工程の後に野菜自体を洗浄するため、加熱料理後の充填工程までのコンベアと比べれば、洗浄を念入りにする必要はありません。当然だと思われるかもしれませんが、これこそがハザード分析の考え方です。この考えに沿って、その求める衛生環境やラインに合った洗浄方法を選択すればよいのです。

もちろんそのためには、工場の各設備や器具に必要な衛生度を明確にする必要があります。その工程でのハザードは何であるのか、工程の前後のつながりを考慮してください。
ある設備の洗浄において微生物の残存がハザードであった場合、その工程の後に殺菌工程があるかどうかによって、求められる洗浄レベルは変わります。

ハザード分析に沿って洗浄方法を決めた後は、いよいよ実施です。しかし、定められたルール通りに継続的に洗浄を実施することは、意外と難しいものです。私自身が食品工場で勤務していた際も、この課題に直面しました。例えば、洗浄作業は比較的経験の浅い従業員が担当することが多く、さらに新人は時間に迫られると作業がおろそかになりやすいため、目的の周知徹底と継続的な教育・評価が必要になります。

コストも時間も限られているなかで食品の安全を守るためには、必要な洗浄方法をハザード分析によって選択し、さらにその方法での作業がいつでも誰でも確実に行えるようにすることが大切だといえるでしょう。
もちろん、上記の条件を満たしているかどうかが、審査の際のポイントとなることはいうまでもありません。みなさまの工場におかれましても、この機会に洗浄方法や実施について、見直しや改善を行ってみてはいかがでしょうか。

PJR 審査員 伊藤 毅(いとう たけし):静岡県出身、農学修士。
前職は食品メーカーに勤務し、食品製造、品質保証、技術開発部門を担当する。ISO 22000の認証取得に携わり、その後は食品安全チームリーダーとして、食品安全マネジメントシステムの実務も経験。PJRでは食品規格の審査、および審査プログラムを担当する。 ワインをこよなく愛し、ワインエキスパートの試験に向けてコルクを抜く日々。