あるべき姿の共有で継続的な品質改善を!



みなさまもご存じのように継続するということは非常に大変なことです。なぜなら変化していく環境に合わせてよりよく変わり続けなければならないからです。言い換えれば、まったく変わりない活動をしているように見えても、それを続けられているということは、逆に外部の環境の変化にうまく対応できているとも言えるのではないでしょうか。
この「変化に合わせてよりよく変わり続ける」という考え方は、ISO 9001(品質マネジメントシステム規格)の原則のひとつである継続的改善に他なりません。このサイトをご覧のみなさまなら継続的改善という言葉をよくご存じだと思います。そこで今回は初心に帰って継続的改善についてお話しします。

品質マネジメントシステムには継続的改善という要求事項があります。継続的改善とは、よりよくし続けていく活動のことです。継続的改善も個々の製品に関わる改善から、会社のシステム全体に関わる改善までさまざまなレベルがありますが、どれもPDCAサイクルという手法を使います。PDCAサイクルは、P(計画)D(実行)C(検証)A(改善)を順番に繰り返しおこなう改善活動のことです。PDCAサイクルを利用する理想的な活動は、会社全体で大きなPDCAサイクルを回しながら、小さなPDCAサイクルがいたる所で回っているような状態です。
ところが、PDCAサイクルという言葉は知っていても、なかなか具体的な改善にむすびつけることができないという声も聞こえます。その原因の1つとして、C(検証)がうまくできていないことが挙げられます。実は、継続的改善のポイントは、C(検証)の段階でいかに問題点を抽出できるかにかかっているのです。
では、C(検証)で問題点の抽出を行う際に効果的なポイントはあるのでしょうか?ヒントはC(検証)ではなくP(計画)にあります。C(検証)で行うのは、P(計画)に対しての現状とのギャップを比べることです。そしてマイナスのギャップには、何らかの問題とその原因が潜んでいるはずです。
品質マネジメントシステムで計画すべきP(計画)には、運営管理活動、資源の提供、製品実現、測定・分析、そして今回の特集のテーマでもある改善に関わるプロセスが含まれています。このP(計画)こそが、目指すべき品質の「あるべき姿」です。これは、階層によって対象が違うこともあります。経営者にとっては会社方針が相当するでしょうし、製造担当者にとっては毎日その手で作っている一つひとつの製品かもしれません。先ほど理想的なPDCAサイクルの活動とは、いたる所で大小のPDCAサイクルが回っている状態だとお話ししました。これは、それぞれの階層での大小さまざまな「あるべき姿」と現在のギャップを確認し、問題を抽出することにより、それぞれの階層での大小さまざまな継続的改善が行われている状態ということです。
当然ですが、「あるべき姿」であるP(計画)自体が、あいまいであったり、実状に即していなかったりしたら、たとえC(検証)で問題が抽出されたとしても、その問題の解決が効果的な継続的改善に直結しない可能性もあります。それを防ぐためにも、P(計画)自体の正しさも確認するためのC(検証)も忘れないでください。
最後に、階層や立場によってさまざまな「あるべき姿」が存在しますが、会社方針は経営者だけのものではありませんし、個々の製品も製造担当の方が一人だけで作り上げることはできません。それぞれの「あるべき姿」を共有し、同じように問題点を共有する。そして、もっとも大きな「あるべき姿」を全員で目指し、継続的改善を続けることが、きっと会社の持続的な成長につながることでしょう。

PJR 審査員 伊藤 毅(いとう たけし):静岡県出身、農学修士。
前職は食品メーカーに勤務し、食品製造、品質保証、技術開発部門を担当する。ISO 22000の認証取得に携わり、その後は食品安全チームリーダーとして、食品安全マネジメントシステムの実務も経験。PJRでは食品規格の審査、および審査プログラムを担当する。 ワインをこよなく愛し、ワインエキスパートの試験に向けてコルクを抜く日々。

※本コラムは、PJRニュースレター「WORLD STANDARDS Review」に掲載されたものの再掲です。