プラスの環境影響を考える



EMSのマンネリ化

審査のなかで「ISO 14001の認証取得は、取得そのものが目的ではなく、環境に対する取組みの始まりであり、継続的に活動し、改善効果を挙げていきたい」というお言葉をよくお聴きします。
しかし、その実践内容と言えば、まだまだ「紙・ごみ・電気の削減」が中心となっているのが現状のようです。
もちろん、そうした取組みも大切であり、特に組織で働く人々の意識づけとなって、環境的な視点をもつようになることに異議を唱えるつもりはありません。
今まで片面コピーだったものを両面コピーに切り替えれば、使用枚数は単純に半減できますし、環境負荷の低減と経費削減の成果に結びつく活動でもあります。
ただ、こうした取組みはスタート時には効果を発揮しますが、認証サイクルの3年もすれば行き詰まってしまいます。
このようなことは「紙・ごみ・電気の削減」に限った話ではなく、「社有車の燃料費削減」「有害物質の排出削減」などの削減プログラムについても行き詰っているというお話を耳にします。
多くの EMS がいま、マンネリ化に陥り、現状打破が課題として浮かび上がってきているのではないでしょうか。

「EMSの『有益』な部分に目を向ける」

さて、環境に関する我が国の根本法となる「環境基本法」では、第1条(目的)において「環境の保全を目的とする」と明記し、第2条では「環境への負荷とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるもの」と定義して、現在の環境を悪化させないよう環境に負荷を与える活動を控え、環境に悪い影響の原因を増やさないことを求めています。
この法理念が影響を与えていると思われるのが環境影響評価の結果です。
EMSを構築するときに、環境側面の抽出から著しい環境側面を特定し、環境目的・目標、環境マネジメントプログラムへと展開していきますが、この過程で「環境マネジメント=環境保全」という意識が必要以上に働いて、環境への負荷を削減することが環境マネジメントであるとの考え方に捉われ過ぎているように思います。
みなさまの環境影響評価は環境に悪い影響を及ぼす環境側面中心で、その環境マネジメントプログラムは削減プログラム・節約活動中心になっていませんか?
資源やエネルギーは、私たちの生活や経済活動を継続するうえで不可欠であり、必要であるから消費しているのであって、ゼロにできることではありません。

ここで、お手元にあるISO要求事項をご覧いただきたいのですが、ISO 14001の規格において環境側面は、「環境と相互に作用する可能性のある、組織の活動又は製品又はサービスの要素」(EMS要求事項3.6)と定義され、環境影響は「有害か有益かを問わず、全体的に又は部分的に組織の環境側面から生じる、環境に対するあらゆる変化」(EMS要求事項3.7)と定義しています。
ここで注目していただきたいのは「有益」というキーワードです。EMSを構築する際には、「環境マネジメント=環境保全」という意識が必要以上に働き、環境への負荷の低減にばかり目が向いてしまうかもしれません。しかし今回は環境マネジメントプログラムのマンネリ化を打破する解決策として、環境にとって有益な影響に注目していただきたいのです。

「環境に有益な影響」

それではここで、環境に有益な影響の具体例を挙げてみます。みなさんの組織の各部門においても、以下のような有益な活動が行われているのではないでしょうか。

  • 営業部門の販売活動:環境配慮型製品の販売促進
  • 設計部門の設計活動:省エネ設計
  • 調達部門の購買活動:グリーン調達
  • 製造部門の生産活動:歩留向上

これらは有益な環境影響をご理解いただくために例示したものですが、ぜひ環境側面の情報の見直し時に有益な環境影響を見つけ出し、環境マネジメントプログラムに展開し取り込むことで、持続可能なマネジメントシステムとして環境経営に活用されることを願っています。

PJR 審査員 佐藤 哲郎(さとう・てつろう)
愛知県在住。米国資本の電子部品メーカーと半導体ソフトウエア開発会社、コンサルティング会社を経て、ペリージョンソン レジストラーにて審査プログラム部門に所属し、中部地方を中心に品質・環境マネジメントシステムの審査活動に従事している。

※本コラムは、PJRニュースレター「WORLD STANDARDS Review」に掲載されたものの再掲です。