審査員の視点に学ぶ有効なQMS運用のヒント



成功のカギは環境変化への「対応力」

 組織運営においては、世界情勢、経済状況、市場の変化、取引条件の変更など、環境の変化に常に対応することが求められ、みなさま、さまざまな努力をなされていると思います。

一方、そうした環境変化に対応するため、QMS全体を見直し、変化させているケースは非常に少ないように思います。組織運営の実態を定期的に評価した結果をふまえ、効果的な対応を考えたとき、QMSの大枠を変更する必要はないかもしれませんが、その一部を見直す必要性は、ないのでしょうか。

例えば、購買先への要求で「コスト削減」の重要性が増したとき、既存の購買先の評価方法は従来どおりでよいのか。「効率化と品質保証」の両立において、現状の作業者の力量は適切か。工場レイアウトにおけるヒト・モノの動線は適切か。つまり、組織を取巻く環境の変化に合わせ、有効なシステムとなるよう見直し、効果的に運用されているかなど、多角的に検証しているのか、ということです。

審査員がQMSの有効性を判断するポイント

環境変化への対応も含め、QMSが適切な状態(有効かつ適合している状態)であるかを、審査ではどのように判断しているのかを見たいと思います。

審査では、まず組織にはどんなプロセス(業務内容とその流れ)があるかを確認し、そのプロセスにおける必須要素を確認します。次に、審査前の情報入手や経営層からのヒアリング結果などを通じて、その時々の環境変化を反映したプロセス管理、つまり効果的な組織運用となっているかを推測、確認します。

例えば、経営層から「コスト削減」の指示があったとすれば、コスト削減を目的として変更された手順や活動の実態に着眼し、現場におけるプロセスを確認するわけです。製品実現のプロセスであれば、例えば、コスト削減への対応を含む不良品の取扱いにおいて、手直し可能な状態が放置され、不良品の識別が不十分であるために社外流出する危険性はないか、などを確認します。

有効なQMSの条件

では、有効な=適合しているQMSであるために、期待されることをまとめてみましょう。

1)各要員が、自身の業務を含む組織の現状を知る。
 -業務がどのような流れで進められているか。
 -その業務にはどのような関連要素があるのか。
 -業務の結果はどうか。
 -組織を取り巻く環境がどのように変化しているか。
2)次に、組織が構築したQMSに対し、基本的な業務や製品要求、QMS要素が整合しているか確認する。
3)さらに、活動の結果や環境変化に対して、QMS上の活動が適切に変更されているか、また変更する必要性があるか(変化点の有無)を確認する。

3)で重要なのは、組織の将来をイメージすることです。イメージしたときに、現状より悪くなる可能性が考えられる場合は、そうならないための方策を検討します。反対に、よくなる可能性が考えられるならば、実現させる方策を検討します。

現状のQMSを見直し、変更が必要となれば、「確実に」実行することです。つまり、「QMSが必要に応じて柔軟に変化し、かつその変化が、顧客(市場ニーズを含む)の要求を満たすという目的に対して妥当であること」が、ひとつのポイントになります。

1)の「現状を知る」という行為は、「言うは易く、行うは難し」だと思います。別の角度から「現状を知る」を考えた場合、QMSを構築しているとするならば、内部監査は、「現状を知る」ことから始まる セルフチェックではないでしょうか。ぜひ、自社における「内部監査」を見直し、セルフチェックという従来の機能を果たしつつ、「現状を知る」、さらには、システムと活動の整合性を検証する能力の向上やイメージすることの習慣を身につけるツールとして、内部監査を活用してみてください。

PJR 審査員 伊藤 隆章(いとう・たかあき)
金融機関勤務を経て、2000年より、ペリージョンソン レジストラーにて審査業務に従事。自動車、鉄道関連をはじめとする製造業への審査は1,000件以上。セミナー研修の企画・開発に携わるとともに、自ら講師も務める。趣味は空手(県大会での優勝多数)と写真(愛機はニコン)。

※本コラムは、PJRニュースレター「WORLD STANDARDS Review」に掲載されたものの再掲です。